日本で急拡大する「リテールメディア」 イオンネクストと楽天の事例から学ぶ、その特長と課題とは?
イオンネクストの藤田氏は、「Green Beans」におけるリテールメディアの主力商品を紹介。「トップページにあるバナー広告と、商品検索の広告が代表的な商品です。商品検索広告はメーカーに説明する際、『ECの棚取り』と説明しています」と話す。
┌────────── スーパーなど、オフラインの店舗では、マヨネーズのコーナーや調味料のコーナーがあり、そこでメーカーがどれだけ棚を取れるかが勝負です。商品検索の場合、キーワードごとに棚があるとイメージしてください。これを『デジタルシェルフ』という言葉に置き換えて、メーカーにご案内しています(藤田氏) └────────── デジタルシェルフに加え、顧客IDや購買データ、検索クエリなどを組み合わせて、広告配信を行っている。「新規購入から継続購入まで全てデータトラックできる」と藤田氏。
「効果が高そう」と杉原氏。藤田氏は商品検索広告の効果事例を紹介した。1ヶ月間の全体販売数に対する商品検索広告経由の商品販売率が、サプライヤーA社では10月に13%だったのが、12月には23%に増加。サプライヤーB社では28%から43%に増加した。
この結果について、藤田氏は「ECの棚取りを活用することで、商品を探している購入意欲の高いお客様に自社商品をリーチすることができます。商品検索広告を活用することが、ECでの販売数を押し上げる一つの成功方法かなと思っています」と話した。商品検索広告の活用のポイントとして「人気のキーワードは取り合いになりますが、ロングテールのキーワードをいかに設定できるかが重要です」とまとめた。
課題は広域営業とマーケティング部、メーカー内でリテールメディアの予算が分断されていること
リテールメディアはこれから伸びていく領域だ。それゆえ、感じている課題もあるだろう。杉原氏が投げかけた次のテーマは「現在の課題」だ。 イオンネクストの藤田氏は、「サプライヤーの理解度もまだまだこれから」と、小売業者とサプライヤーとの協業体制をどう作っていくかを課題として挙げた。特に、メーカー側の組織構造が課題だという。具体的には、藤田氏はメーカーの広域営業といわれる販促領域の営業担当者とやりとりをすることが多いという。 一方、メーカーにはマーケティング部や宣伝部が存在する。メーカーによって、リテールメディアに対し、広域営業とマーケティング部や宣伝部がどうタッグを組んでやっていくかに違いがあるという。「広域営業の販促予算と、マーケティング部の広告予算は分断されているので、それをリテールメディアでいかに統合して使っていくかは、以前から言われている課題ですよね」と杉原氏も頷く。この課題に対し、藤田氏は最近少し解が見えてきたと、次のように話す。 ┌────────── ポイントはデータです。購買データや検索のデータを、広域営業とマーケティング部の両方に提供しています。両組織をブリッジするソリューションとして、これらのデータを使い始めているメーカーさんが徐々に増えてきています。なので、私たちも積極的にデータを提供するようにしています(藤田氏) └────────── 「メーカーの広域営業と、マーケティング部が一堂に会してミーティングを行う機会はないのですかね?」という杉原氏の質問に対し、藤田氏は「少しずつ増えている印象はある」と答えた。広域営業の担当が、マーケティング部へ支援を依頼するかたちで座組ができているケースもあるという。 続いて、楽天グループの春山氏は、オフラインデータの取得の重要性を挙げた。 ┌────────── オフラインのデータをどのように効率的に取っていくかが課題です。お客様の購買体験をなるべく損なうことなく、シームレスにお客様が購買データを提供してくれるような仕組みをなるべく早く構築する必要があると感じています(春山氏) └────────── また、杉原氏は「2023年はリテールメディアプラットフォームがどんどん立ち上がり、日本のリテールメディア元年だったと思っています。2024年は、徐々にメーカーの予算がついてくるフェーズ2に差し掛かったのではないか」と分析。日本よりもリテールメディアが進んでいるアメリカのウォルマートやターゲットの事例に触発されるかたちで、日本のメーカーも予算を使って実験を行う機運が高まっていると語った。