「日本をサッカーの指導者大国にする」オランダで切磋琢磨する“コーチのコーチ”が波瀾万丈キャリアを経て描く壮大なるビジョン【現地発】
『釣った魚が悪かったら餌を与えて良くしていくんだ』
育成年代のクラブが集まって試合をするフェスティバルにも、倉本は積極的に足を運んでいる。 「ベルギーの今年の『KDB(ケビン・デ・ブライネ)カップ』はベルギーのトップクラブに加えて、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、バルセロナ、パルメイラス、PSV、レンジャーズが集まって、これはもう『ミニ・チャンピオンズリーグ』。これが彼らの日常なわけで、南米のチームはそういう大会を転戦する。また、『UEFAユースリーグ』という公式大会もありますしね。この環境はちょっとズルい(笑)」 いま、日本のサッカー界に伝えたいのは、アスレティック・ビルバオの育成部長から聞いた言葉。 「アスレティック・ビルバオは、アヤックス時代のルイ・ファン・ハールの影響を受けていて、アカデミーはいっとき3-4-3しかやらず、個人で状況を打開するチカラを鍛えて、プロで活躍する選手がけっこう生まれた。一番うまい選手が集まるクラブだから、苦手なポジションでプレーさせたり、アヤックスみたいにひとつ上のカテゴリーでプレーしたりするなかで課題を与えていく。 昔、育成部長は『バルセロナやレアル・マドリーは世界中の海で釣りができる。釣った魚が悪かったら捨てて、また新しい魚を釣れば良い。だけど、俺たちはとても小さな湖でしか釣りができない。釣った魚が悪かったら餌を与えて良くしていくんだ』と言っていました。そのマインドがアスレティック・ビルバオの秘密。そこは日本人ももっと真似したほうがいいと思います」 新シーズンはアマチュアのトップクラブ、アルフェンセ・ボーイズを注目しながら活動するという。 「もっとオランダサッカーのカルチャーに深く入っていきたいですね! 他にも北欧の育成にも興味があります」 草の根からトップまで、倉本和昌の欧州での活動はますます幅が広がりそうだ。 <文中敬称略> 取材・文●中田 徹
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