「体育館全体を一つの芸術作品にしたい」…。限界集落の廃校を“終の棲家”に移住、絵を描き続ける85歳彼の波乱万丈の人生
山梨県の最北端の山深く、瑞牆山(みずがきやま)を望む限界集落に、絵画に情熱を燃やし続けている人がいる。 【画像26枚】限界集落にある廃校をアート作品にする工藤さん。その美しすぎる、圧倒的な作品たち 今年85歳になったその人物は工藤耀日(くどうてるひ)。この場所から見えるみごとな瑞牆山の風景に惚れこんで終の棲家と決め、2004年に廃校を借りて移り住み、日々創作活動に打ち込んでいる。 ■限界集落で生きる、画家の情熱に満ちた人生 2008年には「工藤耀日美術館」として一般公開。近くの集落からは少し離れた、つづら折りの急な坂道を登っていった先にあり、聞こえてくるのは鳥のさえずりや風の音だけ。その環境と施設内の天井に天界を描いていることにちなみ“天空の美術館”とも呼ばれている。
校舎内の教室や廊下、そして体育館には、墨彩画150点ほどを展示しており、すべてが工藤さん本人による作品だ。 【画像26枚】「体育館全体を一つの芸術作品にしたい」…限界集落にある廃校をアート作品にする工藤さん。その美しすぎる、圧倒的な作品たち 個人美術館であるため、一般的な美術館とはシステムが異なる。入館しても受付に係がいるとは限らない。 そのときは、自ら工藤さんのプライベートルームとなっている職員室に出向き、入館料1000円を支払って受付を済ませる必要がある。工藤さん自らが絵の解説をしてくれるアットホームさも、ここならではだ。
館内を案内してもらいながら、いかにして絵に取り組み、現在のこの地にたどり着いたのか、工藤さんの画家人生について話を伺った。そこには絵の道を探求し続けてきた一人の画家の情熱に満ちた人生があった。 ■廃校を自分の絵で埋め尽くす 工藤さんのお話の前に、まずは館内の様子を紹介したい。 作品が並ぶ校舎は、廃校当時の状態そのまま。学年が書かれた室名札が見られ、階段を上るときのギシギシと軋む音には、昔の木造校舎ならではの情緒を感じる。