松下洸平さん「フキサチーフ」インタビュー 僕の言葉を探してつむぐ、率直な今の思い
エッセイと連動する歌詞の世界観
――この3年半で感じたことや出来事などを文章にして残したことは、今の松下さんにとってどんなものになりましたか。 僕にとっては3年半の日記のようなものですね。普段日記を書くことはないのですが、この本を10年後、20年後に読み返した時に、その時頑張っていたひたむきな自分の姿が、いつかの僕を助けてくれることもあるかもしれない。そういった意味でも大切な一冊になりました。いつかまた僕が何かくじけた時に、過去の自分が背中を押してくれることもあると思うので、そういう時に自分でも読み返せる一冊になったなと思います。 ――私は本書を読み終わってから「思い出のアルバム」という歌がずっと頭の中で流れているのですが、松下さんがエッセイを書いている時や一冊の本になった今、思い浮かぶ歌はありますか? このエッセイを連載中に僕がリリースした「旅路」という曲があるのですが、その歌詞の世界観が『フキサチーフ』と連動しているような気がします。この曲も過去の自分を振り返りながら今を歌うという内容で「昔を思い出しながら今を知る」というのは、このエッセイでやっていたことと同じ部分でもあるかもしれません。そういう回が本書にたくさん出てくるので、きっと『フキサチーフ』のメインテーマは「旅路」なんじゃないかなと、今思いました。 ――今回はエッセイでしたが、例えば今後、小説や物語の執筆もしないかと勝手に期待をしています。 たまに「監督業や脚本を書いたりしないの?」と聞かれることもありますが、知れば知るほど僕には無理だなと思います。今回、この本を作るにあたっていろいろな方に携わっていただいたのですが、校閲の方ってこんなすごい仕事をしているんだと知って驚きました。全部の章に赤を入れてくださるので、それを僕がチェックし直してお返しするのですが、直しても直しても何度も返ってきて、そのラリーの繰り返しで(笑)。 改稿という作業はやろうと思えば永遠にできるのだそうです。それはイラストやお芝居も一緒で、ものづくりには終わりがないんですよね。「ここまで」って誰かが言ってくれない限り、このラリーは一生続くのだけど、それがものを作るプロの人たちのやり方なんだなと改めて実感しました。例えば僕も、今回の表紙のイラストはこれで終わりだとは思ってないし「どうぞ永遠に描いてください」と言われたら、いつまでだって描けるところはあるし、何回だって描き直したい。お芝居もそうなので、今回校閲の方とお仕事させていただき、ものづくりの面白さと大変さの新たな面を知りました。