東京に憧れない変わり者シェフ二人が地方の食文化を大化けさせるキーパーソン⁉
県外から人を呼べるレストランができれば万事OKではない
── 佐賀が持つ良質な食材と有田焼という固有の器文化を活かしたガストロノミーツーリズムの振興を目指すというのがイベントの目的と思って良いのでしょうか? 安冨喬博さん(以下、安冨) そこに関してはどちらかと言うと二次的な、副産物的なこととしてはあるのですが、まずは佐賀の料理人さんたちにスポットライトを当てながら、彼らの可能性を発信していこうというのが現在の思いです。 それこそ、ここ数年でローカルガストロノミーがわりと急速に全国的に広がって、いろんな媒体で注目の地方のレストランみたいな取り上げ方もされています。ただ、旅の目的になるレストランとか、わざわざ県外の人が食べに来るレストランは、ちょっと角度を変えると地元の人が足を運ばないというか。言ったら県外のお客様100%で、地元の人は、「あ~あそこはね」みたいな。 それでいいのかなという思いがあります。私はそういうお店ではない、地元の人にも愛されるし、でも外の人からも人気があるような。地元の人が「あなた、佐賀に来たんだったら、あそこ行ってみなよ」という、そういうお店が増えて欲しいと思っているのです。
── イベントとしては、前回から地元のシェフが地方のシェフとコラボして料理を作るという風に変わりましたね。 安冨 食の在り方は今とても多様化しています。その中で、ローカルガストロノミーが注目されていて、実際にそういった取り組みをされている地域のシェフとコラボしたいという思いは「USEUM SAGA」の当初よりありました。前回の「とおの屋 要」(岩手県)さんのように、地域で活躍するシェフから学べるところも多いと思いますし、佐賀県のシェフや産地がどんな風に見えているのかも1つ勉強になるかなと思っています。 さらにローカル×ローカルというコラボはお客様の反応も大変良く、県として手ごたえを感じていたので今回もこの形にさせていただきました。 実は、このプロジェクトを始める前は、3つ星とかアジアベストレストランなどのランキングシェフとか、そういう方々を佐賀にお呼びして、食材や器を有名なシェフの方たちに使ってもらうことでプレゼンスを上げるということもやっていました。 でも、コロナ禍というのもあって、なかなか外からシェフたちを呼べない状況となり、私自身も地元の料理人さんたちは、普段、地元の食材や器とどう向き合っているんだろうという素朴な疑問があったので、地元でヒアリングをしてきました。