“子供が伝えたい事”聞く難しさ…児童相談所の一時保護で生活一変した家族 子供の意見と安全確保の狭間で
児童相談所が虐待などの疑いがある子供たちの安全を確保する「一時保護」は、毎年全国で5万件前後となっていて、多くの子供たちが日常から離れた生活を送っている。身の安全を守るためだが、児童相談所と家族の見解が違い、子供たちが辛い思いをすることもある。ささいな親子喧嘩をきっかけにバラバラとなった家族の現状と、解決策を取材した。 【動画で見る】“子供が伝えたい事”聞く難しさ…児童相談所の一時保護で生活一変した家族 子供の意見と安全確保の狭間で
■突然の「一時保護」 2人の里子と離れ離れに
三重県名張市に住む松山健(まつやま・たけし)さんの夫婦には、それぞれ血の繋がりはない、大切な2人の息子がいる。あおいさん(16 仮名)は2歳の時、わかばさん(13 仮名)は3歳の時に、「里子」として迎え入れた。 松山健さん: 「遊びに連れて行った時に肩車したんだけどね。ごちそう食べたら、その晩はもう凄くうれしそうな顔して寝ていましたね」
2人の里子は2022年3月、児童相談所に連れていかれた。きっかけは、14歳になった兄・あおいさんとの『親子喧嘩』だった。わかばさんに対して、「そこのチョコレートを取れ」と繰り返し命令するあおいさんの態度を、松山さんが注意した。口論にはなったが、手を上げることはなかったという。 松山健さん: 「僕に向かって『黙れ、お前は』って言ってきたもんですから。これだけ育ててきたのに、それはないやろうって」
しかし翌日、定期訪問のために児童相談所から掛かってきた電話に、松山さんはあえてこう話した。 松山健さん: 「『実は昨日、大喧嘩をしたんだ』と。『胸ぐらをつかんで一発やった』と言ってしまったんですよ。とにかく(反抗が)ひどい状態だよということを伝えるために、そういう話を出したんです」 “反抗期に入ったあおい君を、児相の職員にも注意してほしい”という思惑は、予期しない事態に発展した。4日後、児相の職員があおいさんとわかばさんそれぞれの学校を突如訪問し、“安全を脅かす情報を得た”として、そのまま2人を「一時保護」した。 「一時保護」とは、子どもの安全を確保するために、児相の判断で親元などから引き離す措置のことだ。その間に調査を行い、帰宅させるか施設に入所させるかなどを判断する。