“子供が伝えたい事”聞く難しさ…児童相談所の一時保護で生活一変した家族 子供の意見と安全確保の狭間で
子供たちへの聞き取りなどから、三重県は、あおいさんが松山さんに「『施設に帰れ』と言われた」などと主張した。“心理的虐待”にあたると認定し、児童養護施設への入所を決めたうえ、松山さんの里親登録も抹消した。 松山健さん: 「してない。『施設に帰れ』なんて言ってないですよ」 Q:三重県は松山さんには確認していない? 「もちろんです。うちの子供たちも、とても幸せに暮らしていました。私たち里親は(児童相談所に)連れていかれたら、『もうあんたは里親じゃないですね』って言われてしまいます」
■「里子であることを知られたくなかった」子供の“心の声”
松山さんの話との食い違いの理由は、あおいさんの“心の中”にあった。一時保護から5カ月後、あおいさんは県の担当者へ手紙を送っていた。 あおいさんの手紙: 「里子であることを友達に知られたくなかったのに、児童相談所の人が何の配慮もなく学校に来て、パニックにおちいっていました。自分を守るためだったら、事実じゃない事でも言おうと思っていました」
パニックの末、「自分に問題があると判断されれば、施設へ行くことになる」と考え、松山さんを悪者にするウソの説明でその場を乗り切ろうとしてしまったと、釈明されていた。 あおいさんの手紙: 「僕は松山の家でいるのが一番安心する。再調査をして欲しい」 当時中学生の少年が、とっさに口にした「自己防衛」の言葉。胸の内を正直に伝えたことで、日常が戻るはずだった。
三重県は5月17日、一時保護の経緯について「あおいさんの証言だけでは判断していない」と説明した。一般論として、児相の役割は「子供の意見を反映させることだけではない」と話した。 三重県 児童相談支援課 近正樹課長: 「自分に有利なような証言をしたとしても、子供の証言だけで判断をするわけではない。虐待があったということを県が判断した。そのことに対して覆すことではなかった。例えば子供が『家に帰りたい』と言っても、やっぱり子どもが帰る先が安全でなければ、『それは安全じゃないよ』ということを伝えて、子供に理解を求めていくのが権利擁護なのかといったところはあると思います」 三重県では2023年、女の子(4)が母親から暴行を受け死亡する事件が発生した。事前に虐待の疑いを把握していた児相が一時保護していなかったことで、批判も集まった。児相は、「子供の安全」が第一だ。