“子供が伝えたい事”聞く難しさ…児童相談所の一時保護で生活一変した家族 子供の意見と安全確保の狭間で
2023年、15歳となったあおいさんは養子縁組を結び松山さんの元に戻ったが、現在13歳のわかばさんは今も施設にいる。一家4人は、まだ元通りではない。
児童相談所の元職員でもある専門家はこの一連の経緯について、児相側の対応に一定の理解を示す一方で、子供の意見の扱われ方に課題を指摘する。
東洋大学 福祉社会デザイン学部 鈴木崇之教授: 「子どもの意見に寄り添って少しでも変えていこうというような姿勢。こういう風になりたいんだっていう子供の意見を、児童相談所側や施設側に実効性のもった取り組みにしていく。そういった基本のところがまず一番問われている」
■全国で広がる『アドボケイト』の取り組み
子供たちが心に秘めている“本当に伝えたいこと”を代弁する取り組みが、和歌山県で進んでいる。 『アドボケイト=代弁者』と呼ばれる、専門の研修を受けたスタッフは、県の委託を受けた第三者の立場で、一時保護された子供にヒアリングし、「児相での生活の悩み」「本当は家に帰りたい」といった、心の声に耳を傾ける。
どんな風に接しているのか、記者が体験してみた。 アドボケイトの家本めぐみさん(toddle わかやま代表理事): 「お名前教えてもらえますか?」 記者: 「かずきです」 家本めぐみさん: 「かずき『くん』でいいか、かずき『さん』がいいか、どっちがいいかな、呼ばれるの?」 記者: 「かずき『さん』で」 家本めぐみさん: 「じゃあ、かずき『さん』。今の気分ってどんな気分?」 記者: 「今の気分…普通、普通かな」 家本めぐみさん: 「そっかそっか、うん、普通でもいいです。でも嫌なことあったりしたら教えてほしいなと思っています」
話を聞く相手は0歳から18歳までの子供で、年齢に関係なく気持ちを表現できるよう、イラストも用いて寄り添う。話してくれた本音は、子供にも表明する権利があることを伝えたうえで、児相に伝える方法も自分で選択してもらう。 家本めぐみさん: 「自分で伝えることができるよという人もいるけど、でも伝えられない人は、横にいて一緒に言うし、希望がちょっとでも叶えるようなお手伝いをしたい」