「ハナミズキ」「小さな恋のうた」「残酷な天使のテーゼ」――令和も歌い継がれるカラオケロングヒットのわけは #昭和98年
テレビ露出なしの曲がなぜ支持されたのか
「DAM平成カラオケランキング」で2位に輝いた「小さな恋のうた」は、MONGOL800のインディーズアルバム「MESSAGE」収録の未シングル曲だ。リリースされた2001年、彼らのテレビ露出は皆無だった。同アルバム収録の「あなたに」がCMに起用されたが、「小さな恋のうた」はラジオやCDショップ、口コミだけで広がりをみせていった。 アンケートで目立ったのは30代回答者の「みんな」という言葉。「みんな知っている」「みんなで歌う」「みんな共通の青春」。30代男性の61%が「歌ったことがある」と回答している。思春期に抱えた思いを歌詞に重ね、仲間たちとカラオケで発散していた世代だ。 柴氏は、カラオケで長く歌い継がれる曲の条件として次の点を挙げる。 「歌うことの喜びや楽しみを喚起させてくれるようなメロディーの普遍性と強度です。歌詞も同様に、時代を超える普遍性を持った詩、歌う人の人生に寄り添うような情感をもっていることが重要です」 30代の男性は「自分の気持ちを伝えてくれる。高校の時にはじめて彼女に好きと言われた曲でした」と回答。別の30代の男性は「学生の頃に合唱の課題曲で取り組んだ。合唱曲としてもよい曲」と答えるなど、当時を思い起こした感想が寄せられている。
原曲のファン層を広げるカバー
とはいえ、特定層の熱量だけで「平成で最も歌われた曲2位」にはなれない。老若男女に広く愛される必要があり、そこで大きな役割を果たすのがカバー曲だ。 「小さな恋のうた」に再び火をつけたのは、2009年に新垣結衣を起用した「ソニーウォークマン」のCM。新垣が口ずさんだことが話題となり、ネット配信曲としてのリリースも実現した。以降、倖田來未やJUJUなど女性アーティストのカバーが続く。それまで強かった男性ソングのイメージを払拭し、女性層の拡大につながった出来事だった。 では、下の世代への広がりについてはどうだろうか。アンケートの中に興味深い回答があった。曲を知ったきっかけについて「推しが歌っていたから」「天月さんの歌ってみた動画で」というもの。 歌い手出身のアーティスト、天月。彼による同曲のカバーは、YouTube上で1.2億回再生されている。原曲の当事者世代の彼がカバーすることで、若者のファンが新たに認知するというサイクルが生まれていた。 「ソニーウォークマン」のCMには次のようなコピーがつけられている。「10代で口ずさんだ歌を、人は一生、口ずさむ。」。シンプルでストレートな「小さな恋のうた」の魅力は、現代の10代の胸にも響き、時代を超えていく。