「ハナミズキ」「小さな恋のうた」「残酷な天使のテーゼ」――令和も歌い継がれるカラオケロングヒットのわけは #昭和98年
春は出会いと別れの季節。送別会でカラオケを利用する機会も増えてくる。カラオケランキングでは優里の「ドライフラワー」やVaundyの「怪獣の花唄」など、令和のヒットソングが人気を集めている。その中で、約30年も前の曲が今もランクインしつづけている。なぜこれほどロングスパンで支持されるのか。ユーザーアンケートと識者の分析を交えながらその理由を探る。(取材・文: Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
30年間、歌われ続ける平成の曲
昨年12月、第一興商が発表した「2023年DAM年間カラオケランキング」(2023年1月1日~11月11日のデータを集計)上位30曲のうち、14曲が平成にリリースされた曲だ。「First Love」「高嶺の花子さん」「世界が終るまでは…」など前年圏外からのジャンプアップが見られた。一方で2016年から8年連続で30位以内をキープしているのが次の5曲だ。 「残酷な天使のテーゼ」 高橋洋子 (1995年) 「小さな恋のうた」 MONGOL800 (2001年) 「奏(かなで)」 スキマスイッチ (2004年) 「糸」 中島みゆき (1992年) 「ハナミズキ」 一青窈 (2004年) 今回、この5曲に関するオンライン調査を3000人に実施した。その回答とともに音楽ジャーナリスト・柴那典氏の解説を交え、支持される理由を分析する。
CD低迷期に起こったカラオケの歌われ方の変化
「DAM平成カラオケランキング」(1994年4月~2018年10月のデータを集計)で1位となったのは一青窈の「ハナミズキ」だ。CDリリースされた2004年の年間売上枚数は25.3万枚、オリコン年間ランキングでは30位と、華々しい記録とはいいがたい。そうした曲がなぜカラオケで厚く支持されたのか。柴氏はこう語る。 「CDが最も売れたのは90年代ですが、カラオケランキングには90年代の歌はそれほど入っていません。ドラマ主題歌やタイアップのヒット曲が次々と生み出される時代において、カラオケは最新のヒット曲を歌う、ある種話題の交換の場でした。それが、CDセールスが下降線をたどる2000年代になると、最新のヒット曲よりも自分に合った曲を長く歌い続ける楽しみ方に変化した。じっくりと歌を聞かせるバラードが好まれる時代に生まれ、残り続けたのが『ハナミズキ』でした」 先の5曲のうち3曲がラブバラードで、結婚式の定番ソングとなっている。結婚式の定番ソングになるということもカラオケで支持される条件になりえそうだが、木村カエラの「Butterfly」、Superflyの「愛をこめて花束を」など、ランキング圏外の曲もある。その違いはどこにあるのだろうか。 「非常に難解な構成とメロディーを持っていることがこの2曲の特徴です。そのためカラオケの難易度は高い。一方、『ハナミズキ』は言葉の乗せ方も平易で、そこまで大きな抑揚もないため、歌いやすい曲といえます」 アンケートの回答もそれを裏付けている。「ハナミズキ」をカラオケで選曲した理由として「歌いやすい」が最も多かった。50代の男性は「男性でも歌いやすい」と、男女ともに歌える曲であると評価する。「糸」「奏(かなで)」も同様に、双方からの支持が集まっていた。