アイドルグループの歴史を変えた、夏まゆみの「叱り方」――モーニング娘。の「育ての親」と呼ばれる理由
6月21日、モーニング娘。やAKB48の「育ての親」として知られる夏まゆみさん(以下、夏先生)が亡くなった。教え子たちは口々に「夏先生から生き方を教わった」と語る。ダンスにとどまらず、「育ての親」といわれる指導はどう特別だったのか。「叱るのが難しい」ともいわれる昨今、どのように導いたのか。モーニング娘。のメンバーとして教えを受けた保田圭さん、後藤真希さん、石田亜佑美さんに聞いた。(取材・文:綿谷翔/写真:横関一浩/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「指導者」に徹し、プライベートでは交流しなかった
日本アイドル文化の基礎を作り上げたと言われるダンスプロデューサー・夏まゆみさん。1998年には長野冬季オリンピック閉会式の振付を担当、紅白歌合戦のステージングは20年以上担当するなど、数々の功績を残した。ジャニーズ、吉本印天然素材、宝塚歌劇団など300組以上を担当し、のべ200万人以上に指導してきた実績を持つ。 モーニング娘。やAKB48の教え子たちは、訃報に接して、口々に「夏先生から生き方を教わった」「これからも夏先生の教えを忘れない」と語った。 では、プライベートでの交流はあったのか尋ねると、一様に「ありませんでした」と答える。夏先生は、著書『教え子が成長するリーダーは何をしているのか』で「相手との関係をつくることと、仲良くなることは、似ているようで別物」と記した。距離を保たないと観察力が鈍る。失敗を経て、指導者の役割に徹するようになった。
現役メンバーの石田亜佑美さんは「みんなで歌って踊れるというアイドルの形ができたのは初期のモーニング娘。だと思います」と語る。確かに、それまではメインの歌い手による「歌」があり、ダンサーはバックで踊るというのが定石だった。 夏先生は「エースはeverybody」と伝え、どのポジションにいても誰もが成長して輝くように、振付を通した人材育成を行った。それを象徴する代表作が、一人ひとりに異なる振付が与えられた「LOVEマシーン」(1999年)だ。 教え子との距離を保ちながら、振付を通して生き方を教える。夏先生の指導に迫った。