高橋 巧選手 独占インタビュー「鈴鹿8耐、3連覇を達成したHRCファクトリーの真実:ライダー編」
2024年型CBR1000RR-R「高橋 巧仕様」仕上がりは60~70%
前2回大会は、長島哲太選手を軸にチームを作り、マシンも彼を中心に開発された。だが、今回は高橋選手を軸にしたチームで、マシンも完全に高橋選手が開発した。2024年はベースマシンも変更されている。2024年型CBR1000RR-Rファイアブレード/SPは、エンジン特性でいえば低中速重視、車体でいえばあえて剛性を落とし旋回性を向上させている。 「ある程度、自分好みになっちゃいますよね。乗りやすく、速くしたいなと思ってやっていたつもりなんですが。マシンが今年ガラッと変わったので、結果的に勝てたから良かったものの、正直にいって良い仕上がりになっていたとは思っていません。プライベートテストをやっているので他チームより有利とはいえ、『テスト回数が2回では少ない』と言っていました(合同テストも2回あったが)。だから、マシンはまだまだ伸びシロがある状態です。8耐時点で60~70%の出来だったのではないでしょうか。それが90%ぐらいになれば、予選で更にラップタイムが出るだろうし、決勝ももっと楽に乗れるでしょう」 ベースマシンが旋回性を向上させたのだから、8耐仕様のHRCファクトリーマシンもその特性を引き継いだものになるのが普通だ。ベースマシン自体はSBK(スーパーバイク世界選手権)で使われている剛性の低いピレリタイヤを念頭に開発されており、それ故のフレーム剛性ダウンだったのではないかと想像される。一方、8耐では剛性の高いBS(ブリヂストン)タイヤだ。そこでHRCファクトリーマシンでは、どう調整していたのか? 「最初、全日本でキット車に乗ったBSタイヤ+CBRユーザーは、みんな不満だったんじゃないでしょうか。BSタイヤに対してフレームの剛性が不足している。(接地面を広げるために)タイヤをツブし切る前にフレームが負けている感じでした」 「そこからフレーム剛性を上げる方向で話をさせてもらいました。だた、フレームとスイングアームのバランスもありますので(キット車は、剛性のあった従来型用スイングアームから変わっていない)。HRCは関さん(鈴鹿8耐マシン開発責任者)が最初に全日本に来てくれて、そういうコンプレイン(訴え、不平)が伝わって、それで8耐仕様が出来上がって、(BSタイヤでも)最初のプライベートテストからそこそこ乗れました」 「全日本でも8耐以後、外せる物を外したりと(マシンの)重量を軽くしたり、チームで各々やっていますが……8耐仕様(HRCファクトリーマシン)は、フレームの弱い所が分かって補強していて、スイングアームも新しく、当然重量とバランスも変わって、剛性も重量も計算されて出来たマシンです」 つまり8耐仕様のHRCファクトリーマシンは、キット車とはまるで違っていたのだ。 「プライベートテストの1回目は、あまり信用していなかったんですが、けっこう良くて、最初からラップタイムも2分5秒台は出ていた。まあ、(5月下旬で8耐よりも)気温が低かったのもありますけど、全日本の車両では2分6秒も出ていなかったと思います」
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