【筆ペンで気軽に水墨画1】黒一色だからこそ、観る人の想像力を刺激する。まずは基本の「点」「線」「面」から
日本のみならず、近年は海外でも人気が高まっている水墨画。「奥が深くて難しそう」と感じる人でも大丈夫です。肩ひじ張らず気軽に取り組める「筆ペン水墨画」の愉しみを教えます(画◎小林東雲 構成◎浦上泰栄 撮影◎本社・武田裕介) 書でもなく絵でもない。107歳まで生きた美術家・篠田桃紅さん… * * * * * * * ◆どんな線も失敗にはならない 水墨画の魅力は、黒一色で描く世界の中に、にじみやぼかし、かすれなどの技法によって、さまざまな黒と白の濃淡が生まれ、繊細な表現ができることです。また、黒一色だからこそ、観る人が想像力を働かすことができるのも、水墨画のおもしろさだと言えるでしょう。 最近、こうした奥深さに惹かれて、水墨画を習いたいという海外の方が増えてきました。2024年に日本で開かれた公募展では、33の国から応募があったほど。自分も水墨画をやってみたいけれど「難易度が高そう」という人には、「筆ペンならもっと気楽に水墨画に取り組める」ことをお伝えしたいです。 筆ペンは、形がサインペンに似ていて持ちやすく、気軽に使えるのに、筆と同じような濃淡の表現や筆遣いができます。また、軸に入った墨が自動的に出てくるため、手があまり汚れず持ち運びもラク。旅先で簡単にスケッチを楽しめるのも筆ペンのメリットです。 今回は、初心者でもすぐに始められるよう、必要な道具や筆遣い、にじみなどの特別な技法について解説していきます。 墨を使うのは緊張するという人もいると思います。かすれやぼかしを表現するには練習が必要ですし、なかなか思うような線を描けないかもしれません。でも実は、水墨画に「失敗」はないのです。もし思ったのとは違う筆運びになってしまっても、それを活かして次の線を描けば失敗にはならないし、むしろそれがいい味わいになることもあります。こう聞くと、人生と水墨画は実によく似ていますね。 年末年始は、年賀状や寒中見舞いを送る、新年会で孫にお年玉を渡すなど、挨拶状やぽち袋をやり取りする機会が増える時期。自作の墨絵を添えて気持ちを伝えてみてもいいでしょう。初めは上手に描くことより、好きな物や風景を題材に選び、自分の感情を込めることを大切に。描き続けるうちに筆遣いが上達し、自分らしい表現が生まれてくるはずです。