センバツで誤審を認め謝罪した審判団の異例“英断”は高校野球の改革を象徴する出来事なのか…リプレー検証導入を求める声も
各社の報道によると大会の審判副委員長は、公認野球規則の同項目8・02(c)である「審判員が協議して先に下した裁定を変更する場合、審判員は、走者をどこまで進めるかを含め、すべての処置をする権限を有する。この審判員の裁定に、プレーヤー、監督またはコーチは異議を唱えることはできない」(一部抜粋)を適用したと説明。緊急対応した審判団を評価した。謝罪については、過去にも夏の甲子園で行われたことがあるという。 実は2019年の夏の甲子園大会の明石商対宇部鴻城の3回戦でもバント処理を一度は「アウト」という判定を下した後に「セーフ」に訂正した歴史的判断はあった。この際にも協議の末、現場の審判団が判断を下したが、場内アナウンスでは、誤審により試合を混乱させたことに対する謝罪の言葉はなかった。その意味で、「誤審訂正&謝罪」は、高校野球の歴史をまたひとつ動かす超異例の出来事だった。開かれた高校野球へ。改革を象徴する決断と言ってもいい。 元プロ野球出身の高校野球監督第1号で、瀬戸内高校の監督時代に甲子園出場経験がある後原富氏は、「テレビで見ていたが、あの位置の打球のフェア、ファウルを最も近くにいて判断できるのは球審なのだから、塁審が先にファウルをジェスチャーすることがそもそもの間違い。力量不足だ。ただ審判も人間。間違いはある。これまで高校野球の審判団は、なかなか誤審を認めることや謝罪はしなかったが、自らのプライドより、正しい判断を選択したことは評価していい。素晴らしい決断だったと思う。おそらく、これは、現場の判断ではなく、高野連の方向性というものが、事前に通達されていたのではないかとも思える。時代の流れを感じる判断だった。誰のための高校野球かということを考えると、その方向性は間違っていない」と、今回の審判団の判断を評価した。 ネット上でも今回の審判団の対応に対して称賛の声が溢れた。 「球審のファインプレーで教育的観点からもよかった」「本来あるべき姿」「真摯に責務を全うする姿に感激した」 過去の甲子園では“世紀の大誤審”と呼ばれた事例が何度か起こり球児を悲しませた。 1982年夏の益田対帯広農では、9回の益田の攻撃が「4アウト」まで行われるという前代未聞の事件があった。3アウトでチェンジとなるはずが、審判団の誰もがスルー。公式記録員が球審に指摘したが、それにも気づかず、次打者が打席に入り三塁ゴロを打ってしまい「4アウト」となったのである。試合後、高野連は会見を開き謝罪、のちに記録は訂正されたが、あとの祭りだ。 1984年のセンバツの佐賀商対高島ではラッキーゾーンにワンバウンドで入った二塁打が満塁本塁打と判定され、試合後に高野連が会見して誤審を認めたことがある。審判が打球を見にくいという理由で翌日から歴代優勝校のボードが外されたが、試合そのものは成立した。また1994年のセンバツでの小倉東対桑名西では、四球を球審が見逃して試合が続行されたこともある。