中2レベルなら海外暮らしもできる...大人が「英語力を底上げする」方法
「実際に使える」英会話を身に着ける
【船橋】会話ができるようになるためには、そういった動画や映画を観ながらインプットをすることは大事ですが、それだけだと先ほど(前編で)お話ししたように「インプットメタボ」になってしまいがちですから、同時に、良質なアウトプットも組み合わせましょう。 【甲斐】船橋先生の『英会話は筋トレ。』シリーズは、まさに効率よくインプットとアウトプットが同時にできるように構成されていますね。実際に使える100のフレーズに絞って、「I like ○○」「I like △△」というように反復して発音することで体に覚え込ませるという。 【船橋】ありがとうございます。英会話も筋トレと同じく反復がとても大事だと思っていて。自動的に口からフレーズが出るところまでもっていかないと、実際に英会話で「使える」ようにならないですよね。 私自身、筋トレ愛好家なのですが、筋トレには「ビッグ3」なるものがあって、それがベンチプレス、デットリフト、スクワットの3種目。体の大腿四頭筋や広背筋、大胸筋などの筋肉を複数使うトレーニングがその3つなんです。 大きな筋肉を鍛えたほうが、体は早く変化しやすいんですよね。英語も同じだと思っていて、もっともよく使うフレーズを反復してトレーニングしていくことが上達への近道だと思っています。 【甲斐】「中学生レベルの英語」ではなく、「中2レベルの英語」というのもポイントですね。 【船橋】はい、"中3までいかなくていい"というコンセプトです。初学者がつまづくのって「関係代名詞」とか「現在完了形」のあたりが非常に多いんですね。なので、それらの少し難しい文法は省き、長い1文になるなら2文に分ければいい、という形で作っています。 それから、heやsheといった三人称代名詞も入れていません。英語のコミュニケーションにおいて何から鍛えたほうが効率よく伸びるかと考えた時に、まずは「I」と「You」、「私とあなた」という2者間の関係性を成立させることが大切だと思うので。このほか、itやthat、疑問文などは日常においてよく使うため、多少取り入れています。 【甲斐】そうですね、itはよく使いますもんね。私の両親も、2人とも日本人なのですが、まさに中2レベルくらいの英語力で何十年もカナダで暮らしていますから、実践力としてはじゅうぶんだと思います。 【船橋】そうなんですね! ナオミ先生のお墨付きをいただきました(笑) 【甲斐】私の両親に限らず、ネイティブもあまり複雑な単語や表現は使いませんよね。日常会話では基本的な動詞を使いまわしていることが多いです。 私の生徒さんでも、たとえば「服を脱ぐ」という表現をする際に「remove」?「delete」?など難しい単語を探す方も多いのですが、「脱ぐ」は「Take off」。 基本的な動詞と前置詞をセットにした「句動詞」で表します。「Get up」とか「Wake up」など、句動詞や熟語は日常生活でかなり使うので覚えた方がいいかなと思います。 【船橋】そうですね。シリーズ続編の『やっぱり英会話は筋トレ。』の方で、それらを取り上げています。動詞のなかでも簡単で身近な「20の基本動詞」を題材に、100の例文パターンにしてトレーニングしていく構成です。 【甲斐】シリーズ2冊をマスターすればバッチリですね。 【船橋】はい。まずこれだけで英語がペラペラにはならないかもしれないけれど、限られたもので"スラスラ感"を味わっていただきたい、という意図で作りました。この2冊に、ナオミ先生の『カタカナ英会話』も組み合わせれば、発音もネイティブレベルになれますね。 改めて、「カタカナ発音法」って本当にすごい発明だと思います。実は先日、『カタカナ英会話』をパートナーにも読ませてみたんですが、まず「難しい」と言ったんですね。なぜかというと、カタカナの下に書かれた英文に引っ張られちゃうんです。下手に英語の知識があると、そっちに意識がいってしまう。 なので、英文を見てはダメ、と。とにかく一回このカタカナを信じて、そのとおり読むんだと言い聞かせまして(笑) そうすると、本当にネイティブのような発音になって驚いていました。 【甲斐】そうでしたか。たしかに、この『カタカナ英会話』も、今まで日本人が覚えてきた英語や従来のカタカナ英語の発音を一回忘れてもらって、まっさらな気持ちで取り組んでもらうといいかもしれません。 【船橋】むしろ初学者のほうが吸収しやすいかもしれませんね。ぜひ、みなさんにもネイティブになった感覚を味わってみていただきたいです。
甲斐ナオミ(ネイティブスピーキングコンサルタント),船橋由紀子(英語学習コーチ)