指を折られ、身体には刺青を…2時間で2000万稼いだ女性など 『闇金ウシジマくん』作者が月村了衛に語った驚きのエピソード
見開きの力、小説の幅
月村 『闇金ウシジマくん』のエピソードといえば、「洗脳くん」編もリアルタイムで拝読していまして、ついにあのネタをやるのかと感慨深いものがありました。 真鍋 上原まゆみに接触した神堂大道が、洗脳や拷問によって上原家を支配していくエピソードですね。 月村 あのエピソードは1996年~2002年に発生した北九州監禁殺人事件をモデルにされていますよね。ものすごく凄惨な事件をモデルに描き切っておられること自体が驚きですが、私は丑嶋と神堂が駐車場で初めて対面する見開きページに、心底シビれました。「この犯人に勝てるのは丑嶋しかいないだろう」と思えて、ダークヒーローの見せ方とはまさにこれだろうと興奮しましたね。 真鍋 ありがとうございます。 月村 まさに闇の二大巨頭がぶつかったぞ、という迫力がありました。「見開き」は、漫画の持つ大きな武器だと思うのですが、やっぱり作者にとっては一番魅せたいところなのでしょうか。 真鍋 僕の場合は、まず見開きを作画してから、ほかのページの構成を作っていくこともあります。 月村 郊外の荒涼とした雰囲気や、渋谷の街中にある駐車場の空気感など、切り取り方が抜群にお上手ですよね。どうすれば小説で、真鍋さんの見開きが醸し出す魅力に対抗できるだろうかと、しょっちゅう考えています。 真鍋 そこまでおっしゃっていただけるなんて。 月村 やはり実在する場所は写真をもとに作画されるのでしょうか。 真鍋 基本的にはそうですね。キャラクターの部屋を描くときも、なるべくそのキャラのイメージに近い人に部屋の様子を撮らせてもらって、それをもとに雰囲気や家具・物の配置を決めていきます。何も素材を入手できなくて、まっさらの状態から描かなければいけないこともありますが。 月村 素材があるのとないのとでは、だいぶ描き方も変わってきますか。 真鍋 絵としてのリアリティには結構影響してきます。漫画は一ページあたりの情報量が多いので、素材があった方が細部まで描き込みやすいです。 月村 なるほど。 真鍋 まっさらな状態から作り込むところに関しては、逆に小説にしかない強みもあるんじゃないでしょうか。例えば京都のお寺でお坊さんたちが生活する部屋や、仏像が保管されている場所などはそうそう見ることができないじゃないですか。 月村 たしかに、小説の場合は文字だけで読ませるからこそ作り込める部分もあるかもしれません。 真鍋 京都というなかなか核心に迫りにくい舞台だからこそ、『虚の伽藍』からは小説ならではの表現の幅を感じました。