指を折られ、身体には刺青を…2時間で2000万稼いだ女性など 『闇金ウシジマくん』作者が月村了衛に語った驚きのエピソード
あの人物と電話で……
真鍋 その点、『虚の伽藍』の人物描写は素晴らしかったです。凌玄はもちろん、和久良が登場したシーンでは「この人がキーパーソンになるんだろうな」という雰囲気をすぐに感じ取れましたし、扇羽組の最上や氷室もヤクザとして格好良くて、個人的にはとても好きです。 月村 ありがとうございます。何を書いても、私の作品にはなぜか必ずと言っていいほどヤクザが出てくるのですが、嬉しいことに毎回、登場した瞬間から評判がいいんですよ。私自身は清く正しい人生を送っているつもりなんですが。 真鍋 あはは。でもバブル期のヤクザの荒っぽさとか、すごくリアルに感じましたよ。 月村 私自身も大阪の出身だからか、関西のヤクザたちは書きやすかった気がします。 真鍋 どうしてあんなにもいろんなヤクザをお書きになれるんですか? 月村 これまでの執筆経験も活きていると思いますが、やはり書いているなかで、彼らのほうからどんどんやってきてくれるという感覚が強いです。私としては、もうヤクザを書くための引き出しは全部開け放ってしまっているつもりなんですが。 真鍋 きっとご自身が考えていらっしゃる以上に、いろんな引き出しをお持ちなんですね。 月村 強いて言えば、日頃から人間観察はよくしているかもしれません。気になる人がいるとついじっと見つめてしまったりして。 真鍋 わかります。僕は今日、ここに来る前に新宿の伊勢丹にいたんですが、エレベーターで、刺青の入ったガタイのいい男性が女性とイチャイチャしているところに出くわしまして。 月村 おお、やっぱりそういう方は気になるものですか。 真鍋 はい。いつか漫画でこういうシーンを描くこともあるんじゃないかと思って、背後から写真を撮ろうとしたんですが……。 月村 隠し撮りですか! 真鍋 ああいう方って、背中に目がついているんだろうかと思うくらい鋭いんですよね。撮ろうと思ってスマホを用意したら、振り返ってキッと睨まれてしまいました。 月村 真鍋さんも日頃から人間観察に余念がありませんね。ほかに、いままで取材をされてきたなかで印象に残っているエピソードはありますか? 真鍋 そういえば、以前裏社会にいる知人のツテで、その世界では超大物の産廃業者の方が主催している集まりに参加したことがあるんです。 月村 触りだけでもスケールの大きな話ですね。 真鍋 とてつもなく大きなフカヒレ料理が出てきたりして、とにかく豪華な会だったんですが、途中、その産廃業の方が誰かと電話で話しはじめたんです。そしたら、「真鍋先生、いますごい人と話してるんですよ。ちょっと代わりますね」と言われて……。 月村 お相手はどなただったんですか? 真鍋 なんと、許永中だったんです。 月村 ええ! 真鍋 僕もびっくりしましたが、めっちゃ優しい雰囲気でしたよ。 月村 人間として魅力的だとは言われていますよね。 真鍋 あと最近だと、銀座のクラブで働いている女性からとんでもない話を聞きました。1年くらい前のことらしいのですが、彼女は某国で身体を売って、2時間で2000万円も稼いできたらしいんです。 月村 2000万! 真鍋 その額を支払う代わりに、買った客は2時間のあいだ何をしてもいいという条件なんだそうです。彼女は指を折られたりとか、刺青を彫られたりしたみたいで。現地の医師から簡単な治療を受けてすぐに日本に帰ってきて、稼いだお金は全部ホストに注ぎ込んだんだとか。 月村 凄まじい話をお聞きになりましたね……。 真鍋 彼女の話だけで、一エピソード作れそうですよね。 月村 取材は基本的にお一人でされるんですか? 真鍋 編集者が手伝ってくれることもありますよ。『闇金ウシジマくん』の「スーパータクシーくん」編を描いていたときは、担当編集者が銀座のタクシー乗り場で並んでいる人にインタビューしてきてくれました。 月村 「スーパータクシーくん」編、私も大好きなエピソードです。債務者である元ホストのタクシードライバー・諸星に訪れるラストがとても文学的で、素敵でした。 真鍋 ありがとうございます。僕だけでなく、編集者も含めたチームみんなで力を入れたエピソードなので、嬉しいです。