300年を乗り越えてきた島商 11代目に刻み込まれた「機を見るに敏」
胆力と戦略でコロナ禍を乗り切る
島商は島田さんの代で、飲食店中心とした業務用油脂の卸に力を入れました。「コロナ禍は、小売店向けのグロサリー品(家庭用商品)などの販売比率を上げ、乗り切ったのです」。島商の強みの一つは、時代に合わせた柔軟性。先代である父からも「常に商品動向は見なさい」と言われていたそうです。 「私たちの取引先は、飲食店、小売店、食品加工工場でしたが、入社してからからずっと、販売の多様化は進めていました」。コロナ禍中は飲食店向けの売り上げが9割減。分散をしていたことで、厳しい局面を乗り切ることができたのです。
今後の課題は継承 島商を次の世代へ
代表に就任してから、13年が経ち、次世代への事業承継への思いは強くなっていくと続けます。「やはり、300年企業の島商を守り、育て続けていかなければという使命感は強くなっています」。島田さんには子どもがいますが、家業については特に話していないそうです。 「近代日本社会で商売を続けてきた、曽祖父・祖父・父の経営者としての共通点は、“機を見るに敏”であること。これは多くの経験をし、多種多様な人と交流するからこそ、磨かれる能力です。家業から離れて、多くの視点を持つことが、大切だと思っています」 また、島田さんは、「社員を幸せにすれば、自ずと未来へとつながっていく」と確信していると続けます。 今、ビジネスを取り巻く環境は、世界情勢の変化、既存のサプライチェーンが変わっていくなど、多くの変化が起こっています。島田さんは、「人と食は切り離せません。油のエキスパートである私たちが、油に軸足を置きつつ、世の中のニーズを広く汲み上げていれば、成長は続く」と断言。成長の伸び代を少しでも大きくすることが、今後の課題だと、穏やかに言いました。
前川亜紀