ココを知ればワイン通!世界を魅了する自然な造りのワイナリー『グレープリパブリック』(山形)に潜入
お伺いしたとき、1基だけ台湾のインポーターが送ってくれたジョージア製のクヴェヴリが置いてありました。高さ2mを越す大きさで、近くで見ると迫力満点。アンフォラもクヴェヴリも丸みを帯びた壺の中で、穏やかな対流が起こり、素焼きの壺ならではのまろやかなワインが出来上がります。矢野さんは「糖分は残さず、辛口のドライなタイプのワインづくりをしています。ワインは農作物なので、その土地の香りや味わい、個性をストレートに感じて欲しい」と話してくれました。
コレクター必見!海外からも人気の和柄のワインラベル
一部に熱狂的なコレクターがいるとも噂される『グレープリパブリック』のワインラベル。南陽市を舞台にした『鶴の恩返し』にちなんだ鶴や、ワイナリー付近で出没するというカモシカ、アイコン的存在のグレリパガールのラベルがあります。 鶴の絵柄にも種類があり、佇んでいるのはフレッシュなフリッツアンテ(微発泡ワイン)シリーズ。羽ばたいているのは、アンフォラを使ったスティルワインシリーズなど、それぞれに意味を込めています。 同ワイナリーは2017年が初ビンテージ。また10年未満の若いワイナリーではありますが、生産量全体の20~25%は海外へ輸出していて、今では14カ国に輸出し、国内はもちろん海外でも不動の人気を誇っています。
今回ワイナリーを案内してくれた矢野陽之さんは兵庫県出身。元々は料理人だったそうですが、イタリアを訪れた際にワインに魅了され、その後、オーストラリア、ニュージーランドを経て、山形に移住し、2019年、30歳のときに醸造責任者に就任しました。現在、県内で一番若い醸造責任者として日々、ワインづくりに取り組んでいます。 グラスに注ぐと美しい色合いを見せてくれる『グレープリパブリック』のワインは見て楽しい、飲んで美味しいと評判で、「”ぶどう”そのものよりも”ぶどう”っぽい」と言われることもあるのだとか。 「料理人をやっていた頃から素材の味を生かしたいと思っていたんです。その結果、今はいかにシンプルにぶどうを表現できるかを追求するようになりました」と矢野さん。 土地の個性を五感で感じられるような、ぶどうの味わいが素直に表現されたナチュラルワインを手がける矢野さんですが、「『グレープリパブリック』のワインが、日本ワインの入り口として、ワインの世界に興味を持つキッカケになって欲しい。若い人や、ワインが苦手だと思っている人にこそ飲んでほしい」と語ります。 「自治体を上げて、街全体で盛り上がっている北海道の余市町のように、目指すは南陽といえばワインと言われることです。寒暖差のある土地は、ぶどうの産地として非常に魅力的な場所。さらに開墾し、フレッシュなブドウの味をストレートに表現するワインづくりに励み、ワインを楽しむ人たちが集まる場所にしたいですね」(矢野さん) 同ワイナリーでは、収穫ボランティアなど一般の方でも参加できるイベントも開催しています。心地よい風が吹き抜ける、ぶどう畑を眺めながら、『グレープリパブリック』のワインを味わってみてはいかがでしょうか。
●DATA グレープリパブリック
取材・文◎加藤朋子