中村アンの壁の越え方 難しかった演技を克服
いまや女性から絶大な支持を得ている中村アンも、気がつけば10年を超えるキャリアを重ねてきた。当初はCMやテレビ番組での活躍が目立ったが、近年は出演作も豊富な売れっ子俳優として定着してきた。クールビューティーなイメージの強い中村だが、映画にドラマに多彩な作品に出演することで着実に評価を高めている。直近の出演映画「名も無き世界のエンドロール」(佐藤祐市監督、29日公開)でもこれまでにない役にチャレンジしているという。いま役者という仕事にどう取り組み、何を思うか。中村に聞いた。 【写真特集】「名も無き世界のエンドロール」新境地に挑む中村アン
俳優になった当初、感情表現に苦戦
俳優としての活動が目立ち始めたのは、フジテレビの月9ドラマに初出演した2015年あたりからだ。本格的に演技の仕事に力を注ぐようになったが、暗中模索の状態だったと振り返る。 「人の前で笑うとか泣くとか怒るとか、最初の頃はカメラの前で感情をさらけ出すことが思うようにできなくて。自分がぜんぜんできていないのはわかるんですけど、具体的に何をどうしたらいいのかがつかめなくて……。いろいろと学びながら考え、時を重ねるという感じを、ここ数年繰り返していました」 とはいえ芸能界で仕事をしている以上、スケジュールは成長を待ってくれない。全力で進み続けるしかなかった。 「ドラマを始めた頃、私、すぐ口角を上げるくせがあって、その気はないんですけど笑っているように見えちゃう。だから、口を閉じるっていうのが私の中で一つのテーマだった時期もあります。高校、大学とチアリーディング部で、口角をすごく上げて満面の笑みを見せる練習をするんです。それがドラマではクールに含み笑いをするとか、歯を見せずに笑うことが私には難しくて。でも、表情は感情からくるものなんだってわかってからは、何かがつかめたような気がします」
チャレンジングな「名も無き世界のエンドロール」
2018年にドラマ「ラブリラン」(日本テレビ系)で主演を務めたことが、一つの転機になったという。幼なじみへの片想いをこじらせた結果30歳にして男性経験がなく、そのうえ3ヵ月間の記憶を失ってしまった地味な女性・南さやか役を好演した。 「主演の私がポジティブじゃないと、共演の方々、スタッフの方々、一緒にやってくださる全員が毎日つまらなくなると思ったんです。なので深く考えずに目の前のことを毎日クリアしていく、ということを心がけました。歩き方一つとっても『落ち込んでる人はそんな歩き方しないよね』など、監督が感情の作り方をすごくていねいに教えてくださって、それがいまも活かされています」 そして29日公開の映画「名も無き世界のエンドロール」は、中村自身にとってチャレンジングな作品だという。岩田剛典、新田真剣佑と共演、政治家令嬢でトップモデルという物語のキーポイントとなる重要な役どころだ。 「今回演じたリサは、いろいろな登場人物の思いが入り乱れる物語の中で、これまでにないぐらい感情をさらけ出す場面もある役で、チャレンジングな経験になりました。一度感情をぶつけるとすごく解放されて、楽しく演じることができました」