綾野剛の現在地「カメレオン俳優だなんて言われますけど」
映画にドラマに出演作が途切れない役者の一人に綾野剛がいる。今年も2月公開の映画に続き民放連ドラが9月に終了したばかりで、13日には北川景子と共演の映画「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」(深川栄洋監督)が公開、そして来年1月公開予定の映画も控える。いずれも主演で、作品を背負っている。これだけ出演作が続くのは役者としての人気や実力、存在感はもちろんのこと、ほかにも秘訣があるはずだ。乗りに乗っている綾野に、仕事への取り組み方をはじめ役者としての現在の位置について聞いた。 【写真特集】2020年の綾野剛「何者なのかな、自分は」
「しなやかな竹でいたい」多彩なジャンルに入れる軽やかさ
「何者なのかな自分は、ってたまに思います」 俳優デビューして17年、キャリアを重ねて現在38歳になった綾野に役者としての現在地について聞くと、そう言ってやや首をかしげた。 「役者とか俳優という肩書をいただいていますけど、“何者”っていう肩書が一番しっくりくるというか。何か、感覚的にそういう肩書にもはまらなくなってきて、結局、何者?と。毎回、監督やスタッフに自分を見つけてもらっている気がするんです」 綾野剛を指してどんな役にも変幻自在に染まる“カメレオン俳優”と評する人は少なくないが、それもそんなふうに「毎回、見つけてもらう」という姿勢が生み出すのか。ただし、見つけてもらうとは言ってもけっして受け身ではない。 「がんばって手を振って、自分はここにいるって現在位置をちゃんと示すことでみんなが見つけてくれる。自分が自分のことを一番見れていないんじゃないか?という感覚を忘れないようにしています」
そしてまたしばらく考えて、口を開く。 「しなやかな竹でいたいんですよね」 どういう意味なのか。 「すごく曲がるけれど、しなやかでありたい。真っ直ぐ伸びて立っているけど、固めない。断然『自分はこれが得意』と見つけてしまったほうが楽なのですが、それをしなかった事で、他ジャンルで多様的な役に挑戦し続けてこれたのだと思います。だから自分が不得意だと思っているものもやらせていただいてますし、映画もメジャーな作品から単館上映の作品、ドラマもゴールデンから深夜、そして当分やってないですけど舞台。いろんなジャンルに分け隔てなく入っていく軽やかさを大切にしています」 実は、インタビューで話すことはまだその時点ではできていないことばかりだという。 「まだまだしなやかにはなれていないなっていう。僕がインタビューで話すことって、今現在できてないことなんです。というのも、自分ができたことって忘れてしまうんです。できたことは作品に残っているんで話す必要がないのだと思います」 だからいままさにインタビューしているこのときも「まだできてないんだけどこういうことしたいんですよね、って相談に乗ってもらっているような感覚です」と明かす。「自分のことに客観的になれるのは、取材の時だけ。『自分はこんなこと考えてるんだ』って、質問されて初めて自覚するようなもので、現在の自分を発見しています」と笑う。