78歳漫画家『ぼっち死の館』齋藤なずな「ぼっち同士、ゆるく繋がった多摩ニュータウンの団地暮らし。健康やお金の不安はあるけれど、お互い様の精神で」
そうはいっても、全員が仲良しというわけでもないんですよ。ある時エレベーター前で、長い髪をゴムで束ねたじいさんがよろよろっとやってくるのが見えたから、待ってあげようと思って、扉を開けたまま「行きますか?」と聞いたら、「先に行け!」とにべもない(笑)。 きっと奥さんにも、そういう口のきき方をしていたんでしょうね。挨拶くらいすればいいのにと思いますけど。女の人は肩書に関係なくゆるくフラットに繋がれるのに、男の人はそれが苦手なのかしら、と感じた出来事です。 それ以外に私は、「図書館友の会」という地域のサークルに入っています。50名くらいいる会員の中には多様な経歴の人がいて、交代でミニ講演会を開いたりして。知らない分野の話を聞くのは面白いですよ。 見た目はよぼよぼのじいさんばあさんも、人生でいろいろな経験をしているわけで。私も先日の会報誌にイラストと文章を載せました。私は誘われて入会しましたが、市の広報紙を見て参加する人も多いみたいです。 団地は、しばらく姿を見かけなかったら誰かが気づいてくれるだろう、という安心感があるのがいいところ。 でもあまり深入りすると、仲たがいしかねません。ひとりで生きている人は、みんなそれなりに気が強いですからね(笑)。ほどほどの距離が近所づきあいのコツです。 ひとりで暮らしていますけど、孤独でさみしいという感覚はありません。ぼっち同士、ゆるく繋がっていると感じられるからでしょうか。 長年暮らしているこの団地で、これからも生きていきたいと考えています。 (構成=篠藤ゆり、撮影=藤澤靖子)
齋藤なずな
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