【深層ルポ】記者が原子炉の下で感じたこと 廃炉・“処理水”放出の現場は今…福島第一原発
未曾有の原発事故から12年。東京電力の福島第一原発では今も廃炉に向けた作業が続けられている。 燃料デブリが堆積する原子炉の下はどのような構造なのか。 中国と韓国に赴任し、事故に対する現地の反応を目の当たりにしてきた筆者が、原発内部に入って感じたこと、そして、“処理水”の海洋放出の現場は今…。 (報道局デジタルグループ、前NNNソウル支局長 原田敦史)
■帰還困難区域に並ぶ“廃屋” 一方で槌音も…
常磐自動車道で福島県の浜通りを通過していくと、次第に「除去土壌等運搬車」と書かれたステッカーを貼った“除染”で出た土を運ぶトラックとすれ違うようになっていく。空間線量を示す電光掲示も目に入るようになってきた。 9月下旬、私たちが向かっていたのは、東京電力の福島第一原子力発電所。以前から希望していた原発内部の取材を兼ねた視察を行えることになったのだ。 周辺の帰還困難区域になっている地域の家々は、瓦が崩れ、雑草が生い茂ったままの状態。 それでも去年(2022年)にJR大野駅周辺などで避難指示が解除され、以前、この地域に来たときよりも営業再開した店や改修工事を行っている建物なども増えた印象だった。 車で海に向けて走ると、多くの人々が出入りする比較的新しい建物が目に入ってきた。 福島第一原発の新事務本館、廃炉作業の拠点として2016年に完成した建物だ。原発内部への視察は、この場所から始まることになる。
■中国と韓国への赴任で感じた原発事故への厳しい反応
筆者は、2011年3月の東日本大震災当時は、東京の本社でニュース番組のディレクターをしていたため、福島、宮城、岩手などへの取材は幾度となく行ってきた。しかし、直後は取材の制約が大きかったこともあり、福島第一原発そのものに入る機会はなく、今回が初めてだ。 原発事故の翌年からは、特派員として中国・北京に約4年赴任(2012~2015年)、いったん帰国して政治部など国内の報道に携わったあと、直近までの約4年(2019~2023年)、韓国・ソウルにも赴任していた。 中国と韓国は、日本と地理的に近いこともあり、日本からの水産物の輸入規制を行うなど、厳しい対応を継続。今年8月に始まった“処理水”の海洋放出をめぐっても、両国では官民様々なレベルで反対の動きが起きていた。そうした反応を肌身で感じてきたこともあり、海洋放出が進むこのタイミングできちんと自分の目で現地の様子を見ておく必要があると感じていた。