誰にでも起こりうる泥沼エピソードに共感!「地獄」だらけの毎日をポジティブに描く『わが家に地獄がやって来た』著者に聞きました
トラブルのない、平穏な日々を過ごしたい…と考える方がほとんどですよね。だけど、そうもいかないのが人生。家族や友人・同僚との人間関係、子育ての悩み、仕事のトラブルなどなど、頭を悩ませていらっしゃる方も多いのでは? 【漫画を読む】『わが家に地獄がやって来た』を最初から読む 平凡な主婦に、そんなあらゆる問題が襲いかかるエピソードを描き共感を得ているのが、『わが家に地獄がやって来た』。著者は『夫の扶養からぬけだしたい』『犯人は私だけが知っている』などで知られる、ゆむいさんです。これまでの作風と異なり、怒涛の日々をコミカルかつポジティブに描いた本作がどのように誕生したのか?お話を聞きました。 ■義実家を舞台に繰り広げられる、波乱の日々 物語の舞台は、東京郊外の商店街にたたずむ小さな居酒屋さん。ここは、主人公・ユキエの義実家です。 夫・サトルの強い希望で、マイホーム購入のための資金を貯めるべく、義両親が営む居酒屋を手伝うことを条件に2階の一室に居候中。第一子の出産を間近に控え、大きなお腹を抱えて働いていました。ストレスの多い義両親との同居、酔っ払った常連客のセクハラに耐えるユキエ。 さらには、唯一の救いだと思っていた夫も大きな子どもに成り下がり、2人で暮らしていたときの頼もしかった姿はどこへやら。誰もユキエの味方がいないという地獄…。 そんなある日、海外赴任中のはずだった義兄とその彼女がやってきます。突然、ここに住むと言い出して…。 モラハラ、女性問題、金銭トラブルetc. それは、これから襲いかかるさらなる地獄の始まりに過ぎなかった!? ■ぶっ飛びエピソード満載のホームドラマ ――専業主婦が経済的・社会的自立を目指す『夫の扶養からぬけだしたい』や、4人のママ友の人間関係を描いた『犯人は私だけが知っている』など、これまでもリアルな主婦の悩みや葛藤を描いてきたゆむいさん。本作を描くことになったきっかけはなんでしょうか? ゆむいさん:最初のきっかけは、レタスクラブWEBで、90年代から続いたドラマ『渡る世間は鬼ばかり』の令和版のような連載をしようという話が持ち上がったことです。そこで、身の回りのぶっ飛びエピソードをかき集めてみたところ、面白そうだったので描いてみました。 ――確かに、次から次へとトラブルが起こるドタバタとした展開が印象的ですね。どのような世界観を目指したのでしょうか。 ゆむいさん:本作を描くきっかけになった『渡鬼』は、実家にいた頃、テレビに映っているのをなんとなく目にしていた程度だったのですが、永遠にドロドロしている空気を感じていました(笑)。大人になってみると、確かに現実世界でもトラブルは度々舞い込んできて、しかも綺麗に片付かない…。もどかしさを引きずりながら生活するのが実情だよなと思います。だけどあまり悲観的にならず、ポジティブさは残したくて、現状の形にまとまりました。 ――本作はコミカルな要素も強く、これまでの作風とは少し違ってエンタメ要素が強い印象を受けました。 ゆむいさん:泥沼夫婦系の漫画ばかり書いていると、どんどん気が滅入ってくるんです…。だから、どうにか雰囲気を変えて、嫌なことが続いても楽しく前向きになれるような内容に挑戦してみたいなと思って描きました。 ――新たな作風への挑戦ということですが、描くうえで大変だったことは? ゆむいさん:途中から体調が悪くなり漫画を描くことそのものができない時期があって…。ネタが揃っているのに描けないのが一番しんどかったです。今は克服したので、また新たに色々書いていきたいです! ■取材や自身の体験などを混ぜ込んだ、盛りだくさんのストーリー ――主人公に次々と降りかかる、はちゃめちゃな事件を面白く読みました。これらの事件やストーリーの構想を考える際、実際に取材などされましたか? ゆむいさん:漫画のために取材をしたのは、居酒屋さんです。こぢんまりとした、常連さんがたくさんいる居酒屋の雰囲気やメニューを知るため、編集担当さんに紹介していただいて取材に伺いました。おいしかったです! 義兄の彼女であるルナが考えたメニューとして登場する「ウインピー」、実際にあります! また漫画内でのやまき酒場で起こるさまざまなエピソードは、とある大衆食堂をモデルにしています。その他は、今まで私の周りで起こったことや編集さんたちがもっているエピソードを混ぜ込みました。 ――やまき酒場の新メニュー・ウインピーは、ゆむいさんが取材したことで反映されたメニューなんですね。他にも、作中のストーリーやセリフ、出来事など、ご自身の実体験は描かれていますか? ゆむいさん:一見はちゃめちゃに思えるやまき酒場の店主夫婦が、地域とお客さんのために真面目にコツコツ働いていることがわかるセリフは、モデルにした大衆食堂の大将と女将さんが実際に言っていたセリフです。半世紀もお店を続けてきた人がいう言葉は重みがあってシビれましたね!! * * * 作中に描かれているとんでもエピソードは、一見すると現実味のないように思えるかもしれません。でも一つひとつをよくよく考えてみると、実は誰にでも起こりうるエピソードばかり! これは、ゆむいさんが実際に取材された内容や、周りの人が体験したことが盛り込まれているからなのですね。怒涛のストーリー展開に、読む手が止まりません。 取材・文=松田支信