じつは「交通事故の2倍以上の死者数」を出している「風呂場での事故死」を引き起こす「二つの原因」
冬場の入浴で死亡するというのはよく聞く話だが、その死者数が交通事故者数の2倍もあることをご存じだろうか? あくまで高齢者に限った話だが、消費者庁「65歳以上の不慮の事故による死因別死亡数」によると、令和3年の風呂場での溺死は6,458人。交通事故死者数2150人の2倍以上なのだ。 【マンガ】19歳理系大学生が「フィールドワーク中」に死にかけた「ヤバすぎる体験」
寒暖差で血圧が急上昇
昔から、冬場に風呂で死ぬという話はよく聞く。つい先日もタレントの中山美穂さんが入浴中になくなった。なぜ風呂に入っていて亡くなってしまうのか。五本木クリニックの桑満おさむ院長は言う。 「理由は2つあります。ひとつはヒートショックです。急な温度変化で心臓がビックリして心筋梗塞が起きる場合です」 暖かいところから寒い所へ行くと体が緊張して血管が収縮、血圧が上昇する。風呂に入る際に、脱衣所まで暖房していないことが多い。だから入浴前に血圧が急上昇していることになる。その後に風呂に入ると暖かくなって血管が広がり、血圧が急低下する。この血圧の激しい変化に耐えられず、心筋梗塞が起きる。 「お風呂だけじゃなくてトイレも同じですね。トイレも暖房していないので、寒いんですね。それに踏ん張ると血圧が上昇します。それで心臓がおかしくなります」 ヒートショックは暖かいところから寒いところへ移動したときに起きる。浴室も寒いことが多いので、風呂に入る前に心筋梗塞で浴室で倒れることもある。統計上、ヒートショックでの死亡者数が増えるのは11~4月、晩秋から春先にかけて、暖房が必要な季節だ。 浴室での突然死は高齢者しか関係ないと思いがちだが、中山美穂さんはまだ54才で、還暦も迎えていなかった。若くても医師から高血圧だと注意されている人は、他人事だと思わない方がいい。
お風呂でウトウトは死のサイン
もう一つの理由は、お風呂に入った時、急激な血管拡張で脳に血が行き渡らなくなることだ。 「お風呂に入ると体が温かくなって血管がゆるみます。血圧が下がり、一時的に脳に血が足りなくなる。軽い貧血が起きてボーッとしてしまうんですね。お年の方はそのままボンヤリして寝入ってしまい、溺れてしまうんです」 脳に血液が足りずに軽く気を失ってしまっているため、体の反応が鈍い。風呂で寝てしまい、口元にお湯が来て、ハッと目が覚めることはよくあると思うが、あのハッとした時に体がうまく動かず、そのままお湯を飲んで溺れてしまうのだ。 「睡眠不足だったりアルコールが少し入っていると危ないですね。お風呂でウトウトするのは気持ちいいですが、人によっては気持ち良いというよりも貧血で意識を失った失神状態になります。おじいちゃんがのんびりお湯に漬かっていると安心していたら、失神して溺れかけているかもしれません」 入浴時間と風呂の温度も溺死と関係があるそうだ。 「国際医療福祉大学大学院リハビリテーション学分野教授の前田眞治先生にお聞きしたのですが、ぬるめの長風呂は危険だそうです。安全な入浴方法はお風呂の温度はぬるめの40度以下、入浴時間は15分以内が目安とのことでした」 浴槽から急に立ち上がるのも危険だ。風呂の中では水圧がかかっているので、血管が収縮し、血圧を押し上げている。急に風呂から出ると、水圧がなくなったことで血管が拡張、貧血を起こしやすくなる。