ゴキブリの求愛行動にフェロモンが果たす役割を解明 新しい駆除法に活路 福岡大など
特に、オスゴキブリのメスへの誘引行動や求愛行動にはPB処理経路の活性化が必須であることが分かった。渡邉助教がPB受容体の機能を喪失したワモンゴキブリを作ったところ、オスはメスに引きつけられず、求愛行動もしなかった。渡邉助教は「PB受容体やPB処理経路が働かないようにする薬剤が開発できれば、交尾しなくなり数が減らせる。新しいゴキブリ駆除の方法に使えるのではないか」としている。
ゴキブリのフェロモンに関する研究は1970年代から行われ、90年代に化学合成に成功した。それを機に、フェロモンを用いたゴキブリ駆除剤を各メーカーが開発してきた。ただし、特定種のオスしか引きつけることができないという欠点があった。一方、現在用いられている食品の香りを使った駆除剤はオスもメスも引き寄せるが、益虫まで駆除してしまう。
こうした中で環境負荷の少ない効率的な駆除や個体管理の方法に加え、開発コストを抑えることも課題となっている。渡邉助教は「PAとPBを化学合成するには高いコストがかかる。今回の研究でPA受容体とPB受容体の分子構造が分かったため、この構造に効率よくくっつく分子を探すことができそうだ。AI(人工知能)を使ってそのような物質が見つけられれば、フェロモンと同様の高い誘引効果をもつ化学物質を低コストで作成することも可能ではないか」と話している。
今回はワモンゴキブリで研究したが、今後は日本で生息するクロゴキブリなど、他のゴキブリについても研究したいという。
研究は日本学術振興会の科学研究助成費とサントリー生命科学財団の助成を受けて行われた。成果は米科学アカデミーの「PNAS ネクサス」の電子版に4月30日に掲載され、福岡大学などが5月15日に発表した。