スズキとも資本提携 見えてきた「トヨタ・アライアンス」の未来形
トヨタの変化と鈴木修会長の直談判
かつてトヨタは「大が小を飲み込む」ような風土があった。完全子会社になる前のダイハツなどは、それで何度も痛い目に遭ってきた。しかしトヨタは2009年に北米で発生した急加速リコール問題で、社長自ら米議会の公聴会に呼ばれ、そこで日本人技術者がいくら説明しても「日本人が日本企業のために嘘をついている」と決めつけられる恐怖を味わった。 エンジン制御系の技術者はほとんど全てが日本人。このままでは何をどう説明しても理解してもらえないという土壇場で、北米でナビの開発を担当していた米国人女性エンジニアが専門外ながら自ら手を挙げ、証言台に立ってくれた。そうやって初めてトヨタの説明が聞いてもらえたのである。 そこでトヨタが学んだことは大きかった。トラブルが発生した時、日頃の行いがモノを言う。普段から世のため人のための活動を目に見える形で行なっていないと、いざという時に信頼が得られないことを学習した。以来トヨタは、提携などのあり方を変えた。相手を尊重し、尊敬する姿勢がなければ、最終的に提携は実らないことを今トヨタは折に触れて言うのだ。 そして、そのトヨタの変化にいち早く気づいたのが、スズキの鈴木修会長だった。筆者が「おや、もしかしてトヨタは最近変わってきたかな?」とぼんやり感じ初めていた2016年、鈴木会長はトヨタの豊田章一郎名誉会長の元に駆け込み、あっという間に業務提携交渉の開始までこぎつけてしまった。その成果が今回の資本提携である。 さてスズキが加わったことで、アライアンス内のA、Bセグメント車種には、トヨタ、ダイハツ、スズキに加えてマツダという、多様という表現にはいささか過剰な競合車が割拠することになる。 基本的な競合関係は「ダイハツとスズキ」「トヨタとマツダ」だ。ダイハツはASEANを担当し、スズキはインドを担当する。トヨタとマツダはほぼ真正面から競合するが、一方で北米ではマツダのMazda2(デミオ)を新型ヤリス(ヴィッツ)として販売するなど、一筋縄では行かない様相を呈している。しかも年明けにはトヨタ自身がヴィッツをモデルチェンジしてそれが加わる予定だ。トヨタ本体は、それらの競合に対して基本ニュートラルだ。どれかが勝てばいいだけだからだ。