スズキとも資本提携 見えてきた「トヨタ・アライアンス」の未来形
2016年から業務提携に向けた協力を進めてきたトヨタ自動車株式会社とスズキ株式会社が、資本提携に踏み切ります。トヨタとしては、マツダ以来2社目の相互持ち株による資本提携となり、これによってトヨタ、ダイハツ、スバル、マツダ、スズキという5社が資本で結びつくアライアンス体制が誕生します。 この資本提携からどんな戦略が見えてくるのか。モーター・ジャーナリストの池田直渡氏に寄稿してもらいました。 【写真】なぜスズキはトヨタを選んだか? 両社の「このままじゃダメだ」
マツダ以来2例目となる相互持ち株
8月28日。トヨタとスズキは資本提携を発表した。トヨタはスズキの第三者割当により、発行済株式の4.94%(960億円)を取得。スズキは市場買付によってトヨタの株式を480億円取得することになっている。これによって「トヨタ・アライアンス」を構成するトヨタ、ダイハツ、スバル、マツダ、スズキの5社は全て資本によって結びついたことになる。 さて、第三者割当がどうのと言っても誰にでも分かるわけではないので、少々乱暴に単純化すれば、スズキによるトヨタ株の取得は、すでに発行済の株をスズキが市場から購入するだけで、トヨタから見れば資本は増強されていない。株の持ち主が変わるだけだ。 反対にトヨタによるスズキの株式取得は、スズキが新規に株式を発行し、スズキの資本は時価で960億円増強されたことになる。乱暴ついでに言えば、スズキはトヨタに出してもらった960億円の内半分の480億円を使ってトヨタ株を買い、残り半分が資本の増強となる。ちなみにスズキがインドのグジャラート州でエンジン工場を建設した時の投資額が500億円なので、インドで工場を1軒建てるくらいのお金だとイメージできる。 さて、ここで注目すべきポイントが一つある。トヨタが提携に際してトヨタ株の所有を認めたのは、マツダと提携した時以来、史上2度目のことである。ちなみにマツダの時は、トヨタは自己株式を500億円割り当て、マツダは第三者割当増資を500億円割り当てて、相互に同額の株式の持ち合いをする形だったので、少し条件が違う。 とはいえ、株式の相互保有は、相手先に自社の議決権の一部を認めることを意味するので、一般的な技術提携などとは重みが違う。スズキとの提携がアライアンスの中でも特別な提携であるのは間違いない。 さて、現在資本提携面から見たトヨタ・アライアンスの現状は以下のようになる。 《子会社》 ・ダイハツ トヨタ持ち株100%(ダイハツは上場廃止) ・日野 トヨタ持ち株50.15% 《資本提携会社》 ・スバル トヨタ持ち株16.77%(筆頭株主) ・マツダ トヨタ持ち株5.1%(第2株主・相互保有) ・スズキ トヨタ持ち株4.94%(第3株主・相互保有)