「うちの社長、また偉そうなことを言っているよ…」“冷めたシラケる現場”を変えるシンプルな方法
こういった幹部や中間層が、宗教の理念を現実に当てはめながら語り続けていくことが重要なのだ。 ■企業研修は「ミサや礼拝を見習うべし」 そのための仕組みづくりも重要である。 宗教が巨大化してさまざまな地域に普及すると、その地域の現状に即して宗教をどう位置づけ、解釈するかが大事になる。 それは現代のキリスト教なら、ミサや礼拝という形で残っている。 キリスト教では週末に信者がミサや礼拝に行くが、そこで神父・牧師が、現地の生活事情を踏まえながら、説法をしてくれる。
この経験を通じて信者は、神の教えを踏まえて、その地域での日々をどうすごしていくべきかを自分なりに考えて腹落ちし、生活しているのだ。 これとまったく同じことをやっているのが、実は世界で成功するグローバル企業の「研修」だ。 ■グローバル企業の社員研修「本当の狙い」は? 欧米のグローバル企業でも、社員研修を頻繁に行っているところは多い。 しかし、そこで行うのは座学で知識を学ぶこと以上に、「創業者やトップの理念を、現場の業務活動に結びつける腹落ち」を狙ったものが多いのだ。
宗教と同じように、企業も大きくなるほど、社員はさまざまな地域の現場でさまざまな業務に従事するので、「トップの語る抽象的なビジョン」とのズレを感じ、共感できなくなっていく。 「社長は偉そうに高邁なことを言っているけど、俺が毎日現場で泥臭くやっている作業と何の関係があるんだ」と思ってしまう大企業社員は多い。 だからこそ、「いや、あなたの現場の仕事は、このような意味で当社のパーパスやビジョンとしっかりつながっているんです」と腹落ちしてもらう必要がある。
そのため、海外のグローバル企業では「自社のパーパス、ビジョンと自分の日々の仕事はどうつながっているのか」を議論する研修が、半年に1度は設けられる(日本企業でこういう研修をやるところは少ないし、あったとしても頻度が低い)。 まさに、週に1度のミサや礼拝を通じて、神の教えと自分の日常生活の結びつきを「腹落ち」させる機会を作るのと、同じことをやっているのである。 「センスメイキング」(腹落ち)のために、企業やリーダーたちでできるもうひとつのことは「パーパスやビジョンをきちんと言語化し、さまざまな形で見せていく」ことである。