要介護の認定は運次第!認定率の「高い自治体」「低い自治体」の歴然たる格差
心身の症状が軽い「要支援1・2」と介護が必要な「要介護1~5」との7段階に区分される介護保険制度。現場で介護に従事していた筆者いわく、要介護の認定結果は一部「運」次第な部分もあるのだとか。軽く判定されてしまわないために押さえておくべきポイントとは?本稿は、結城康博『介護格差』(岩波新書)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 要介護者の出現率は 地域で差がある!? 周知のように、介護保険制度は、心身の症状が軽い「要支援1・2」と、それらが重く介護が必要な「要介護1~5」との7段階に区分され、介護度が上がれば保険適用のサービス量が増えていく。逆に、重度の要介護者にとっては軽く判定されると、サービス量が足りなくなる。 そのため、一部の高齢者やその家族は思っていたより軽度な結果になると介護保険サービスは利用しづらいという。 例えば、心身ともに重度で要介護2程度と思っていたのに、要支援2との判定が出されて限られたサービスしか利用できないケースなどだ。 特に、要支援1・2と、要介護1~5とではサービス体系が大きく異なり、要支援1・2は「介護予防支援」といった位置づけで、利用できるサービスが限定的だ。もちろん、結果が軽度であれば、それだけ心身の状態が良好で好ましいことではある。しかし、要支援2と要介護1といった境界線の認定結果となると、介護サービス利用にかなりの影響を及ぼしてしまう。
要介護認定のプロセスとしては、利用者が市町村に申し込むと、(1)市町村から認定調査員が対象高齢者の自宅もしくは入院・入所先に出向いて、その聞き取りをもとに認定調査票に記入して報告書をまとめる。(2)主治医(かかりつけ医)の意見書を市町村が取り寄せる。(3)調査票と主治医の意見書を、市町村の認定審査会で合議して判定、決定する。これらの調査票の基準や方法は全国画一的なルールに基づいている。 しかし、第1号被保険者に占める認定者の割合(出現率)は、地域によってバラツキが大きい。 厚労省「令和2年度介護保険事業状況報告(年報)」によれば、全国平均で18.7%であるが、大阪府(22.3%)、和歌山県(21.9%)、京都府(21.5%)などは高く、逆に茨城県(15.5%)、埼玉県(15.8%)、山梨県(15.9%)などは低くなっている。 都道府県間ですら一定の差が生じているということは、市町村間ではさらに格差が生じていると考えられる。つまり住んでいる地域によって、要介護(要支援)認定者になりやすいか否かに差があるということだ。