アシックスが中期経営計画を上方修正、2026年に営業利益1300億円目指す
「トレンド創出型」の商品展開で人気維持を目指す
スポーツスタイルは、2019年に発足。アクティブなライフスタイルを送る顧客層をターゲットに展開するアシックスのライフスタイルカテゴリーで、アーカイヴアイテムから現在までのテクノロジーやデザインをライフスタイルに落とし込んだアイテムを展開している。2020年から順調に推移し、同部門の2023年の売上高は618億円。2026年には1550億円を見込む。同社は、「スポーツライフスタイルフットウェア」市場規模は、2023年から2024年で9.5兆円から10兆円に成長し、うち同社のシェアは1%から1.6%になると予測。対して、「90ドル(約1万3850円)以上のスポーツライフスタイルフットウェア」の市場規模は同2.7兆円から2.9兆円の成長を想定し、現在2.8%の同社のシェアは4.3%に拡大すると見込んでいる。ライフスタイルフットウェア領域は競合が多数参入する巨大市場だが、米小売大手のフットロッカー(Foot Locker)や中国のECサイト「JD.com」といった大手流通企業との取り組みを強化することも視野に、90ドル以上の中~高価格帯商品に注力することで売上拡大を狙う。 ◆コラボ先にも変化 ブランド価値向上戦略の一環として取り組むのは、商品のプレミアム化に加え、コラボレーションなどによる差別化やアパレルコレクションを活用したスタイリング提案に伴う「ライフスタイルブランド」としての発信、販売チャネルやイベントを通じたブランド体験の強化がある。コラボパートナーはこれまで、ハイファッションやストリート領域を中心に選定してきたが、近年ではサステナビリティやサブカルチャー、タレント、アスリート、ミュージシャン、ライフスタイルといった多分野・多業種へ拡大。幅広い顧客層へのリーチを狙う方針にシフトしており、今年11月にはYOASOBIとのコラボプロジェクトを発表した。 ◆トレンドは後追いせず、創出する スポーツスタイルでは現在「ヴィジュアルテック」「モダン」「ヴィンテージテック」「クラシックス」の4つのライフスタイルシューズとスケートシューズの計5ラインを展開。中でも、2000年代モデルのアーカイヴを揃える「ヴィンテージテック」が2021年以降高い人気を見せている。同ラインの商品数は、2021年は全体の13%だったのに対して、2024年には全体の約44%にまで拡充した。 ヴィンテージテックの人気の背景には、アシックスの「トレンド創出フロー」があると執行役員でスポーツスタイル部門の統括部長 鈴木豪氏は説明する。同社は、グローバル水準の多様性のあるトレンドを掴むため、神戸と東京に加えて、アムステルダム(欧州)、カルフォルニア(北米)、ボストン(北米)、上海(中華圏)に本社機能を備え、世界各地に地域統括MD拠点を設けている。ヴィンテージテックの人気にも、こうした世界各地のMDチームとの情報共有によって、マクロトレンドや顧客の価値観の変化を捉え、そこにブランドの強みを活かしたアプローチで提案していくという「トレンド創出フロー」に則った取り組みが寄与していると分析。トレンドを後追いする形で商品供給を増やしていた時期はトレンドの消耗を早めてしまう傾向にあったとし、商品のフレッシュさや勢いを長く高い水準でキープするためのプロダクトライフサイクルや需給管理も徹底しているという。このほか、現在のトレンドの終息も見据え、ヴィンテージテック以外のプロダクト開発といったポートフォリオの拡大を並行して進める。 ◆顧客セグメントごとにレイヤーを分けた卸売を強化 スポーツスタイルが販売チャネルの中で特に重視するのは卸売。卸売の2024年度累計売上は前年比78%増を見込み、チャネル全体の73%を占めるいう。ラグジュアリーブランドを目指すオニツカタイガーが直営店を中心にブランドの世界観表現に注力しているのに対し、スポーツスタイルではターゲット顧客や商品MDと連動した流通の階層分けを実施。上位顧客層にフォーカスした取り込みを強化していく。 廣田康人代表取締役会長CEOは、「今後は現状のような急成長とはいかずとも、毎年10%以上の成長は実現していくだろう。現在もまだ通過点。本来我々が競争しなくてはいけない、世界の大きなブランドへの挑戦権をようやく得たと思っている」と話している。