いまある危機と光明。日本の魚食、一体どうなる!?(専門家が監修)
日本の漁業生産量はジリジリと減少中。ピーク時の3分の1程度に
「日本の漁業は戦後、沿岸から沖合、沖合から遠洋へと発展しました。しかし1973年の第一次オイルショックによる燃料費の高騰や排他的経済水域の設定の影響を受けて、遠洋漁業は衰退していったのです」 日本の漁業生産量は1984年にピークを迎えるが(1282万トンで世界1位)、1990年代以降、右肩下がりで減少していく。2022年の漁業生産量は、386万トン。前年比で31万トン減少し、1956年の現行調査開始以降、初めて400万トンを下回った。 漁業で働く人の数もハイペースで減少中。90年代には30万人以上いたのだが、現在は15万人程度。また、2018年には、高齢化率(65歳以上の割合)が38.3%という状況だ。
コロナ禍で魚の消費量が拡大。やっぱり日本人は魚が好き!?
肉に日本の食卓の主役の座を奪われてしまった魚だが、再び主役に返り咲く可能性もゼロではないかもしれない。 「というのも、コロナ禍に見舞われた2022年度、魚介類の消費量が前年度から4%アップしたんです」 外食機会が減少し家庭での食事機会が増えたことで、家庭向けの魚介類製品の需要が伸び、それに伴ってスーパーでの品揃えも豊富になったことが要因だと考えられている。 その後、再び魚介類の消費量は減ってしまったが、自宅で料理をする時間、家族が食卓に揃う時間が増えれば、少々料理に手間がかかったとしても魚を選ぶ人がいるということなのだ。 魚離れを食い止めるには、リモートワークの推進などを進めることも有効なのかもしれない。
注目を浴びつつある低・未利用魚。一体どんなもの?
魚体のサイズが不揃い、漁獲量が少なくロットがまとまらない、傷がついている、加工に手間がかかる、調理方法が普及していないといった理由からほぼ市場に出回らない魚は、低利用魚、未利用魚と呼ばれる。 飼料になったり、場合によっては廃棄されることもある低・未利用魚だが、決して味が悪いわけでなく、地魚として地元民に愛されている魚も多い。漁業生産量の改善、SDGsへの貢献、食文化の維持・創成に繫がるといった理由から、少しずつだが注目を浴びるようになってきている。 「低・未利用魚を扱っている地元の魚屋に出向き、魚を知る。そんな小さな一歩が日本の魚食の未来を明るくするはずです」
取材・文/神津文人(初出『Tarzan』No.873・2024年2月8日発売)