第161回直木賞受賞会見(全文)大島真寿美さん「これからも淡々と書いていく」
文楽の魅力は?
共同通信:共同通信の瀬木と申します。こちらです。おめでとうございます。 大島:ありがとうございます。 共同通信:文楽のどういうところに強く引き付けられたのか、その魅力とは何かということをちょっとお話しいただけますでしょうか。 大島:まさにここに書いたんですけど。それはもう本当に一度見て、ご本人で見ていただくのが一番いいと思います。 共同通信:これから見る方のために、少し言語化していただくとどんな感じになりますか。 大島:言語化。本当に美しいし、物語が、そのものがダイレクトに伝わってくるので、ちょっと異世界に入るぐらい、入り込めると思うんですよ。 共同通信:それはご自身にとっての小説とか物語の理想みたいなものと、どこか近いところがあるんでしょうか。 大島:近いといえば近いし、遠いといえば遠いし。ただ、語りの美しさっていうのが浄瑠璃であると思うんですが、私は本当に今回、語りがすごく気持ち良かったんですよ、自分で書いてて。語りは、もっとなんかやりたいなっていう気持ちはあります。 共同通信:ありがとうございます。 司会:ありがとうございます。では最後の1問とさせていただきます。
受賞によって新たな思いは生まれたか
読売新聞:読売新聞の【ムラタ 00:15:23】です。おめでとうございます。 大島:ありがとうございます。 読売新聞:大島さん、小さいころから、なぜだかよく分からないけどずっと書いていくんだろうな、書き続けていくんだろうなと思われていらしたようで、中学校3年生のときに進路希望で文筆家と書いたということなんですけれど。今回受賞したことによって、ずっと書いていくということに対して、何か新たな思いが生まれたりだとか、これが背中を押してくれるだとか、そういうちょっと力強いものを得たりした感じはありますか。 大島:それはもうずっと自分の中で、ずっと思うっていうか、ずっとそうなんですよ。全然変わってなくて、中学校のときから。だからこれからもずっと同じだろうなって思います。 読売新聞:なぜだか分からないけど書いてきたっていうお話をされていて、今回の受賞作も前回の候補作も、テーマというほどじゃないかもしれないけれど、なぜ人は物語を紡ぐのかっていうものだったと思います。そういうものを2作書いた中で、じゃあ自分はなぜ書いてきたのか、なぜ書くのかというのが少し見えてきた部分はありますでしょうか。 大島:それがなかなか分からないんですよね。本当に書いているとき、ちょっと分かったかなって思うこともあるんですけど、でもやっぱりなんか、確信を持ってこれだっていうような感じはつかみきれなくて、だからつい出てきちゃう。 読売新聞:今も、結末を決めずに書いているというのは変わらないですか。 大島:はい。 読売新聞:綱渡りな感じも、今もそういう。書いているときは綱渡りですか。 大島:(笑)。はい。 読売新聞:それも変わらない? 大島:はい。 読売新聞:それも今回の受賞で何か少し、綱渡りでもいいんだとか、何かそういう、変わるところはありそうですかね。 大島:いいんだっていうわけではないんですけど、本当にもう、どうしてもこういう書き方しかできないんですよ。なので、突然違う書き方ができるようになる可能性はあるかもしれないんですけど、今できることをやっていこうと思います。 読売新聞:分かりました、ありがとうございます。
最後にひと言
司会:ありがとうございました。では大島さん、何か言い残されたようなことがございましたら、ひと言お願いします。 大島:言い残したこと。 司会:はい。感謝でもなんでも。 大島:本当に今回、皆さん、本当に名古屋の書店さんも喜んでくださっているし、文楽の皆さんも喜んでくださっているんです。だから本当に、それ、本当に応援してくださったことを感謝しております。ありがとうございました。 司会:ありがとうございました。これにて第161回、芥川賞・直木賞の受賞記者会見を終了いたします。長時間ありがとうございました。大島さん、ありがとうございました。 (完)【書き起こし】第161回直木賞受賞会見