【コラム】レッドブルのローソン起用人事に納得できる理由はあるのか? 希望的観測と角田裕毅への評価
リカルド、ペレスへの期待は無に帰した
確かに、レッドブルがペレスと契約延長を決めた時、既に調子を落とし始めていた。しかし、それは単なる“一時的なモノ”として片付けられたかもしれない。 ペレスはシーズン序盤、エミリア・ロマーニャGPの不本意な週末とモナコGPのクラッシュで躓いただけだった。悪い週末がゼロのドライバーなどいるだろうか? モナコで1度もクラッシュしたことのないドライバーなどいるのだろうか? ホーナー代表とマルコとしては、ペレスが全てを跳ね除けるという展開は、あまりにも魅力的なことだったのだろう。その上、新たな契約によってペレスの自信を取り戻したかったのだろう。 サマーブレイク以降もペレスをチームに留めるという決断は説明が難しい。しかし2024年のF1カレンダーには、アゼルバイジャンGPやシンガポールGPなど、ペレスが過去に得意としたサーキットが残っていたのも事実だ。ペレスの復調を期待したレッドブルを責めるのは間違ったことだろうか? しかし、これこそ決断が全て間違っていると思われる理由だ。ほとんど裏付けがないまま、純粋な希望的観測で下されたモノだとしか思えない。 レッドブル陣営は、リカルドがマクラーレンで過ごした2年間が衰えの証拠ではないことを願った。2022年の終わりには、リカルドをシートから降ろすために多額の違約金を支払ったマクラーレンのザク・ブラウンCEOを責める者はほとんどいなかったほど、状況は悪化していたのに、だ。 もちろん、レッドブル陣営がリカルドのカムバックを画策したシルバーストンのテストでは、魔法のようなラップを見せた。Netflixにとっては素晴らしいことだが、リカルドがかつての姿に戻ったと信じるには十分な理由にはならなかった。 レッドブル陣営は2023年、メキシコシティGPを除き、称賛に値する出来事がほぼなかったにもかかわらず、リカルドに期待し続けた。そしてホーナー代表は2024年の開幕時点で何も変わっていないのにもかかわらず、奇跡を期待していた。マルコが見切りをつけていたのにもかかわらず、ドライバーに時間を与えていたのだ。 ペレスの契約延長を正当化することも難しい。2022年と2023年にも同じようなことが起きているのに、どうしてペレスの“一時的な不調”が数ヵ月も続かないと望んだのだろうか? 少なくともレッドブル陣営は様子を見ていた。 そして今回、レッドブル・レーシングはF1出場たった11回という若手ローソンを起用。ホーナー代表自身が「F1で最もタフな仕事」と語るフェルスタッペンのチームメイトを託すことになった。この1年半で下された決断の中で、おそらく最も説明が難しい。