【コラム】レッドブルのローソン起用人事に納得できる理由はあるのか? 希望的観測と角田裕毅への評価
ローソン起用の合理性と角田裕毅への評価
ローソンがレッドブル・レーシングのシートを手にすることになった、陣営の計算違いや賭けの失敗といった経緯を全て無視すると、今回の人事に合理性を見出すのはほとんど不可能だ。 おさらいしてみよう。過去4年間でF1タイトルを6つ獲得したレッドブル・レーシングが、F1出走11回というドライバーと契約した。そのドライバーのF1での最高成績は9位で、主要ジュニアカテゴリーでのタイトル獲得経験はない。また、2024年は6回の予選のうち6回でチームメイトの後塵を拝し、コンビを組んだ期間ではポイント獲得数も少ないのだ。 考えてみてほしい。1年前、ローソンはレッドブル陣営からRB入りをオファーされるほどの実力はなかったのだ。そして今、6戦のレース経験を重ね、メインチーム昇格に十分な実力を身に着けたと判断されたのだ。 ローソンは学習能力が高いと言われている。ここ数年、彼は様々なマシンを乗り継いできたが、常に素早く適応し、レースを制してきた。それは事実だ。しかしレース勝利はタイトル獲得とは違う。しかも、グリッド上で最高のチームのひとつでレースをするという話だ。 F1のトップレベルでは、ただ早く最大限の力を発揮することが重要なのではなく、最大限の力が並外れて高いことが重要なのだ。しかしローソンの実力がどの程度なのかには疑問符が残る。何しろ、2年連続で同じマシンをドライブしたのはFIA F2が最後。最初のシーズンでドライバーズランキング9位、2年目でランキング3位という成績は、必ずしも“トップドライバーの素質”があるとは言えない。 たとえローソンの学習能力が高いとしても、チームメイトの角田裕毅をすぐに上回ることができたわけではない。それもグッドニュースとは言えない。 レッドブル陣営が角田の昇格に消極的な理由があるのは明らかだ。ひとつひとつ見てみると、理由も説明できる。バーレーンGPのクールダウンラップで採った行動だけでも、ホーナー代表とマルコが敬遠するには十分だったと言えるかもしれない。また、角田を起用しない理由リストに、ポイント圏内走行中にスピンを喫したカナダGPや、メキシコシティGP予選Q2でのクラッシュなどの致命的なミスを加えることができる。 それらは依然として、時効にはなっていない。しかし残酷なようだが、レッドブル陣営は検討していないドライバーよりも遅いドライバーに落ち着いたという事実も無視できない。 チームメイトに打ち勝つまで数レースでは足らないというドライバーを、学習能力が高いと言えるだろうか? そうしたポテンシャルを示したことがないのに、どうしてトップチームに相応しいと言えるのだろうか? たとえ、そのための時間がなかったとしてもだ。どちらの主張も、それを裏付ける十分な証拠がないのだ。