徳川家康、きんさん・ぎんさん、森光子さん…「長寿の人」が食べていたモノとは? 世界が注目する「超健康食」
宇喜多秀家が食べていたのは“アシタバ”
その家康と関ヶ原の戦いで対峙した宇喜多秀家の食にも、ぜひ触れておきたいと思います。 西軍の主力だった秀家は戦いの後に八丈島に流されます。戦に敗れた秀家。しかし、ある意味では家康に勝利したともいえます。八丈島で権力闘争から解放された秀家は穏やかな生活を送り、家康の寿命を上回る数え年84歳まで人生を全う。つまり、「長生き勝負」では家康に勝ったのです。 その秀家の長寿を支えたのがアシタバでした。アシタバはカルシウムが豊富な上に、そのカルシウムの利用効果を高めるビタミンKも一緒に含まれているので、骨を強くする食材といえます。さらに、老化予防、抗菌、がん予防、血行促進の効果がある、カルコンというポリフェノールの一種も含まれています。 海に囲まれた八丈島で余生を過ごした秀家は、魚の干物や昆布などの海産物を常食していました。「三大幸せホルモン」の一つであるセロトニンの原料となる、必須アミノ酸のトリプトファンが魚の干物などには豊富なため、秀家は精神的にも幸福感に満ちた健康的な晩年を送ったことでしょう。 老いてなお超仕事人間として現役を貫き権勢を振るった家康と、リタイアしてストレスから解放された状況で穏やかに過ごした秀家。この二人の生き方は対極にありますが、人生100年時代の高齢者にとって、共に参考になる人生モデルといえるでしょう。晩年の過ごし方は一つではないのだ、と。そんな二人を支えた食もまた、私たちのお手本になるはずです。
体の“錆び”を防ぐには……
ちなみに、やはり家康に敗北し、斬首され天寿を全うできなかった石田三成は、処刑される前の最後の食事に「ニラ雑炊」を所望しています。ニラには、ニンジンやホウレンソウ以上にβカロテンが豊富で、数ある野菜の中でもトップクラスです。βカロテンは、現代ではアンチエイジング成分として注目されています。三成は、殺される間際にそのニラを食べたがったというのですから、何とも皮肉な話です。 その三成が仕え、「人生50年時代」に数え年62歳まで生きた、家康と並ぶ戦国ヒーローの豊臣秀吉も長寿の部類といえるでしょう。彼はニンニクを、皮をむかずに食べることを好んでいました。「万葉集」には奈良時代の人たちのニンニク食文化が詠まれ、「源氏物語」にも「極熱(ごくねち)の草薬(そうやく)」としてニンニクが登場しています。その名の通り、平安時代は風邪などの薬にも用いられていたニンニクを、作者の紫式部自身も薬として活用していたからこそ、「源氏物語」にニンニクが出てくるのでしょう。 ニンニクの独特の匂いや辛味の元となっているアリシンという成分は、強力な殺菌効果を発揮し、第2次大戦中にはヨーロッパの戦線でニンニクが「戦場のペニシリン」として重宝されたといいます。 アリシンには疲労回復効果もあり、ニンニクが古くから日本人の元気の源であったことがうかがえます。 亡くなるまで現役の浮世絵師として活躍した葛飾北斎は、家康や秀家以上の「超長寿者」で、数え年90歳まで生きました。彼の好物の一つはそばです。そばにはブドウ糖をエネルギーに変換するのに力を発揮するビタミンB1などの他に、ルチンという抗酸化成分も多く含まれています。酸化、すなわち体の「錆び」は老化の元凶の一つです。北斎が生涯現役を続けられたのには、そばのルチンが大きく寄与したに違いありません。