1億円超の高額物件ほどよく売れる … 顕在化する格差「東京でも不動産は三極化する」 #令和のカネ
山田さんは2年前に購入を決断しておいてよかったと感じている。それは土地の高騰だけではなく、住宅の建材費をはじめとして、さまざまなものが値上がりしているからだ。 「いま同じ地域で同じくらいの広さの家を買おうとしたら、9000万円でも買えません」 山田さんが話す通り、わずか1、2年買う時期が遅れただけで、価格が1000万円ほど上昇しているのは珍しいことではない。コロナ禍の前であれば買えたものが、コロナ後にはとても手が届かない価格になった物件は、新築でも中古でも見られる。 問題は、なぜこれほど不動産価格が上がっているのかということだ。
高騰の背景に2つの「ショック」と人手不足
不動産価格の上昇について、直近数年の理由として挙げられるのが人手不足と建設資材の高騰だ。日本建設業連合会によると、建設資材価格は2021年1月からの2年間で28%値上がりした。原因は、木材価格の高騰「ウッドショック」と鋼材価格の高騰「アイアンショック」。これら2つの「ショック」の背景にあるのはコロナ禍での落ち込みとそこからの復調だ。 ウッドショックについては、コロナ禍以前の異常気象など自然環境の変化も影響していると経済産業省もレポートで指摘している。
<もともと、虫害や山火事等で原料が不足しており、コロナで製材所の休業を余儀なくされた中にその動きが加わり、世界では建築用木材需要増の結果、木材価格高騰が引き起こされています。そして現在、その影響が我が国にも及んでいます>(経済産業省、経済解析室) アイアンショックも同様で、コロナ禍明けの経済回復が世界で同時多発的に起き、需要が急拡大したことで高騰した。 さらに日本では人口減少と高齢化による人手不足も顕在化した。それによって、建設現場で働く人の労務単価はコロナ禍の前後で10%程度上がっている。 少し先に視線を移せば、こうした価格がまだ上がりそうな要因もある。2024年の働き方改革だ。 来年4月以降、トラックドライバーや建設業者に対して1日の労働時間の制限が強化される「2024年問題」が控えている。現在は足りない人手を補うように長時間労働が続けられているが、来春からはそれが難しくなる。そうなれば、人件費はさらに上がる可能性がある。 こうした状況を踏まえると、この先も不動産が高騰する条件はそろっているように見える。現状でも平均的な所得のサラリーマンが買うには相当厳しい東京の不動産だが、ますます手が届かないものになるかもしれない。