1億円超の高額物件ほどよく売れる … 顕在化する格差「東京でも不動産は三極化する」 #令和のカネ
だが現状は、冒頭に示したように、都心に近い高額な物件ほど飛ぶように売れている。前出の不動産流通システムの坂爪さんが語る。 「都心5区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)といわれる人気エリアのタワマンは売り出すと、購入希望者がすぐに現れる状況です。一時期は中国など海外のお客さんもいましたが、昨今の主な購入者は日本人です。最近、日本人でも1億円以上の物件を難なく買える富裕層が増えていて、居住用以外に3つも4つも物件を買う人がいます」
千代田、港など都心5区の住民所得は大幅増
なぜこうした現象が起きているのか。 調べてみると、この都心5区の住民の収入は以前に比べて大きく伸びていることがわかった。
総務省の課税標準額の調査をもとに比較すると、アベノミクスを推進した第2次安倍晋三内閣が本格的に始動した2013年時点での給与所得者の平均所得は、渋谷区で702万円、千代田区で848万円、港区で901万円だった。だが2022年には、渋谷区で1000.3万円、千代田区で1077万円、港区では1471.9万円といった具合に、渋谷区で1.4倍、千代田区で1.27倍、港区では1.63倍とそれぞれ所得が大きく伸びていたのである。 国民全体での平均所得は下がっていたが、都心の一部では逆に大幅に上昇していた。いわゆる所得格差が顕著になったことで、高額な不動産を買える人が増え、都心に集まるようになってきたのが、この10年の大きな変化といえる。 同時に女性の就労の増加で世帯収入も増えている。今年7月のニッセイ基礎研究所のレポートでは、統計調査をもとに<妻が高年収であるほど、夫も高年収層の割合が上昇する傾向がある>と分析している。
<2022年では、年収1,000万円以上の妻の72.7%が夫も年収1,000万円以上である一方、年収200万円未満を除くと、妻の年収が低いほど夫も比較的低年収の割合が高い傾向がある。つまり、高年収同士、あるいは低年収同士が夫婦であることで、夫婦(世帯)間の経済格差の存在がうかがえる> 現在の不動産市場で起きている現象は、こうした購入層の変化、格差が顕在化しているということだろう。 では、この先の不動産市場はどうなるのか。