1億円超の高額物件ほどよく売れる … 顕在化する格差「東京でも不動産は三極化する」 #令和のカネ
今後の不動産は条件によって「三極化」進む
不動産コンサルタントの長嶋修さんは「不動産の三極化が進むだろう」と見通しを語る。 「第一に、港区など都心5区を中心とした人気エリアの不動産価格は上がっていくでしょう。第二に、『駅から遠い』など不便で条件が悪いエリアの不動産価格は徐々に下がってくる。その条件の許容範囲が段々と狭まり、緩やかに価格が下がるエリアが出てくる。その条件は世田谷区などでも変わりません。そして第三に、空き家が問題になっているように、住み手がつかない場所の不動産はほぼ無価値になっていく。そんな『三極化』が進むでしょう」
都心5区のような大都会では人気が下がることはなく、それ以外のエリアは条件によって選別されていくということだ。具体的には主に「都心へのアクセス」「最寄り駅からの距離」「周辺環境(学校や病院、スーパーなど)」の掛け合わせがカギで、その条件を満たさないエリアから価格が下がっていくことになる。 東京23区内で都心部へ通勤30分圏内といった条件の良い物件の価格は高騰しており、世帯年収1000万円以下ではローンも組みにくい状況に陥っている。そういう場合は「都心からはやや遠い」「駅からは15分歩く」など条件を下げて予算に合致した物件を探すしかない。不動産価格が上がるほど、不動産格差は拡大していく構造が浮かび上がる。 価格が下がりにくいエリアであれば、将来的に売却する際にも買い手に困らないだろうが、人気のないエリアであれば買い手を探すのは困難だろう。また、共働き家庭が増えていることから、仕事と子育ての両立が可能な場所を選びたい人もいる。その交差地点がどのあたりになるのか、今後の不動産価格にも表れてくるだろう。 人口減少、少子高齢化が加速し、収入格差が顕著になる中、不動産の選択による地域のある種の階層化が進んでいく可能性があるのかもしれない。
--------- 小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。政治、経済、社会問題などを中心に取材している