1億円超の高額物件ほどよく売れる … 顕在化する格差「東京でも不動産は三極化する」 #令和のカネ
「2022年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査」(リクルート)によると、購入物件の所在地で「東京23区」は10.1%と、2014年の19.6%からほぼ半減している。一方で、東京都下や埼玉県での購入例が増えている。 こうしたデータからも、東京23区で家を買おうと思っていた層が、不動産価格の高騰に伴い、選択肢を郊外に移さざるを得なかった様子がうかがえる。 ただし、不動産価格が上がっても人気エリアでの需要はなくならない。
「子育て重視」山手線外で条件に合う物件購入
国家公務員の山田徹さん(仮名、30代後半)は2021年6月、杉並区に新築の戸建て住宅を購入した。山田さんの妻も上場企業で働いており、合わせると世帯年収は約1200万円。 それまでは城西地区にある公務員住宅に住んでいたが、第一子が保育園に通い始めることや第二子が生まれる見込みになったこともあり、「子育てをしていくマイホーム」の購入を決めた。山田さんが一番重視したのは立地だ。 「私も妻も都心勤務ですが、子どもを保育園に預けるので、送迎する必要があり、何かあったときにすぐに家に戻れるようにしたい。通勤時間は30分程度に収めたいと思いました」 通勤時間を基準にいくつも不動産屋を巡り、都内の複数の地域で物件を見学した。マンションも戸建ても見たが、山手線内の物件は高額で、条件に合うものはなかなか見つからなかった。粘り強く探した結果、新宿から電車で10分程度の杉並区高円寺に適した物件を見つけた。 土地代が5500万円、建物代が3000万円で計8500万円の新築物件。敷地面積は狭いが3階建てで、延べ床面積100平米と家族4人で暮らしていくには十分な広さといえる。最寄り駅からは徒歩15分近くかかるが、その程度は許容範囲だと考えた。頭金にはためておいた1000万円を入れた。
「残る7500万円を35年間のペアローンで組みました。ローンは変動で0.37%という非常に安い金利で借りられました。月々の支払いは約19万円。生活費を差し引くと毎月の給料はあまり残らず、正直言って経済的な余裕の少ない生活ですが、総合的に考えて最善の選択ができたと思っています」 そう考えるのは、山田さんにとって家を買うのはこのタイミングしかなかったからだという。最優先にしたのは、子育てをする時間だ。 「僕らが家を買う目的は、子育てに注力する約20年を良い環境にするためでした。もし『5年後にもっと安くなる』と言われても、その間に子どもは5歳分成長してしまう。その5年間をちゃんと使えなかったら意味がないんです。子育てが終われば、ローン完済前に売却して夫婦2人で暮らしやすいマンションに引っ越すかもしれません」 そのために地価が下がりにくい地域での購入を意識した。実際、杉並区の公示地価は前年比で4%程度上がった。もし土地が30年間値下がりしなければ建物の価値がゼロになったとしても5500万円で売れる。そうなれば、30年間は建物代分しかかからなかった計算になる。