1億円超の高額物件ほどよく売れる … 顕在化する格差「東京でも不動産は三極化する」 #令和のカネ
希望地域はあきらめ遠いエリアで購入
都内でIT企業に勤務する会社員の中村慎二さん(仮名、31歳)も、購入地域を見直した一人だ。結婚3年目で第一子が誕生した2021年10月から不動産購入を検討し始めた。もともと妻の実家に近い城北エリアの賃貸マンションに住み、勤務地である千代田区のオフィスへ通っていた。そのため当初は、電車1本で通勤できるエリアで物件を探し始めた。 中村さんの年収は800万円程度。商社で正社員として働く妻の年収は500万円程度で世帯年収は約1300万円。購入価格の上限は夫婦で話し合って7000万円と決めた。 「子どもは2人欲しいと思っているので広さ70平米くらい、3LDKの新築マンションを買いたいと思いました。ただ、妻は妊娠や出産で休職や転職などの可能性もある。そういったことも考慮すると、ローンは夫婦で7000万円くらいが限度だと考えました」 マンション市場に関する記事を読みあさり、ネットで相場を調べながら城北エリアを中心に探した。だが、通勤30分圏内では該当する物件がほとんどなかった。最終的に選んだのは荒川区の町屋駅から徒歩7分ほどの場所にある分譲マンションで、価格は予算通りの約7000万円。広さも70平米だ。探し始めて半年ほど、2022年春に契約した。頭金はなく、夫が5000万円、妻が2000万円のペアローン(夫婦ともに主たる債務者のローン)を組んだ。
「実家に近いので子育てに適していると念頭に置いていたエリアでした。地下鉄の千代田線で都心へのアクセスがいいことに加え、このエリアは今後再開発が進められる予定なので、不動産価値も下がりにくいだろうと考えました」 欲を言えば「もっと勤務先に近い場所で」と思っていたが、現在の高騰する不動産市場を考えると納得できる選択だったと語る。 中村さんのように、希望よりも遠い場所で購入を決めるケースが増えていると、不動産売買の仲介業務を手掛ける不動産流通システムの坂爪潤さんも指摘する。 「住宅ローンを組んで買う人の場合、借りられる金額は年収の7、8倍と言われています。年収1000万円の人であれば7000万円くらい。しかし、この年収では現在の都心の価格帯で買うのはなかなか困難です。そうなると、想定よりも遠い場所に変えるなどして探すほかありません」