なぜK-1王者の武尊は魂のKO防衛を果たせたのか…裏に天心戦実現への壮絶覚悟…「死ぬ覚悟がないと相手を殺せない」
リングサイドには天心の姿があった。 試合前に天心が来場することは耳に入っていた。 「気合は入った。天心に負けない試合。火をつける試合ができたらいい」 だが、その一方で、「この試合に集中しないと。先を見ていたらダメ。勝ってK-1の中での最強を証明しないと、その試合をやる権利はない」との葛藤もあった。 武尊は、天心来場の情報を「無理やり(頭の中から)出しました」という。入場の花道沿いに天心は座っていたが、「見ないようにしていた」。 そして「この試合で終わってもいい」という覚悟を決めた。 後先を考えず、レオナに捨て身の勝負を挑み打ち勝ったのは、その覚悟の差だった。 「自分が死ぬ覚悟がないと相手を殺せない。あの危険な距離に入るには自分が死ぬ覚悟がないと入れない。打ち合いに強いといわれるが、それは覚悟の差じゃないかな」 一か八かの魂がむき出しになったファイトこそがファンの感動を呼ぶ。西川さんは、「いい試合だった。勇気をもらった」と声を震わせていた。もしかすれば、精密でスピードのある天心との戦いでは、この荒っぽい激闘スタイルは、命とりになるかもしれない。だが、武尊は、人々の心に訴えるプロの格闘家だった。 武尊は、リング上から天心に向かってこう呼びかけた。 「天心選手も世界最強を証明している日本人の一人。最高の舞台で、最高の試合を届けたい。本当に長い間お待たせしました。この試合、僕はやろうと思っているので、ぜひ天心選手お願いします」 バックステージでも改めて「早くやりたいし、自分が一番強いときにやりたい。これから実現に向けて頑張ります」と言った。 互いに頂上決戦のリングに上がる最後のハードルをクリアした。6年越しの宿命の対決へ機は熟した。まことしやかに流れている噂は「6月・東京ドーム」である。