なぜK-1王者の武尊は魂のKO防衛を果たせたのか…裏に天心戦実現への壮絶覚悟…「死ぬ覚悟がないと相手を殺せない」
キックボクシングの「K―1ワールドGP2021ジャパン~K’FESTA.4 Day.2~」が28日、日本武道館で行われ、メインのK―1スーパーフェザー級タイトルマッチでは、王者の武尊(29)がKrush同級王者のレオナ・ペタス(28)から計3度のダウンを奪い2ラウンド1分4秒にKO勝ちした。無謀な殴り合いを仕掛け勝ち取ったKO勝利の裏にあった武尊の壮絶な覚悟。武尊は来場していた“神童”那須川天心(22)に改めてドリームマッチ実現を呼びかけた。
最強挑戦者レオナは「失神して覚えていない」
不敵に。 武尊は笑っていた。 「楽しく戦えた。レオナ選手の気持ちが見れたから。友達じゃないけれど、この人と殴り合いたいと思った」 “石の拳”と評される強打自慢の最強挑戦者、レオナが繰り出すジャブ、ワンツーを浴びても「効いていない」とばかりにクビを振ってニンマリと笑う。 「お互いにスイッチが入った」 1ラウンドの残り10秒を示す拍子木が鳴った直後。武尊の格闘本能にスイッチが入った。 殴り合い上等。レオナは、まるでストレートのような左を放ち、武尊が少し後ずさりすると、さらに左右のパンチを繰り出してきた。その刹那。武尊の左フックが衝撃のカウンターブローとなってレオナの顔面をとらえたのだ。レオナはマットに後頭部をたたきつけるほど激しくダウンした。ゴングに救われたが、ロープを使わないとコーナーに帰れないほどダメージを受けていた。 「けっこうやばくて。インターバルでも回復していない状態だった」とは、試合後のレオナの回想。 もうフィニッシュは時間の問題だったが、2ラウンドを迎えると武尊はまずはカーフキックを思い切り見舞った。 「流行に乗ることはしたくないが、僕も成長、進化しないと生き残っていけない。新しいことを取り入れてやっていかないとトップでいれない」 今回の試合に向けてもう1度復習し直した技である。 そして前に出て再び壮絶な殴り合いを仕掛けた。 実は、事前の作戦は「いかない」「右は打つな」だった。無防備な殴り合いの禁止である。 レオナは、その破壊力に加え、ストレート系の伸びる種類のパンチが特長で、一方の武尊のそれはフック系だから、ラフに殴り合うとレオナのパンチが先に当たりカウンターとなるリスクがあった。武尊にとって打ち合いは、その危険な領域に入ることになる。しかも、武尊は、一度目の対戦を延期する原因になった左拳に“爆弾”を抱えていた。 実際、このラウンドで強烈な一撃をもらって左膝がガクンと落ちた。 「拳が硬かった。脳に来る。初めての感覚だった」 それでも武尊はあえて作戦を無視した。 「倒されてもいい。殺されてもいい気持ちで殺しにいった」 やるか、やられるか。被弾覚悟でラッシュした。