ファンとの距離が裏目に、小金井刺傷事件にみる身近なアイドル警備の難しさ
ライブハウスなどで歌手として芸能活動をしていた大学生の冨田真由さんが、東京・小金井市でファンの男に刺された事件の裁判の判決が28日、言い渡された。何カ所も刺され、一時は意識不明の重体に陥った痛ましい事件に、検察は懲役17年を求刑し結審したが、下された判決は懲役14年6カ月。冨田さんは代理人の弁護士を通しコメントを発表、「たった約14年後には、犯人が塀の外を歩いている。そう思うと、今から不安と恐怖しかありません」などと心境を吐露した。熱心なファンが転じてストーカー的な犯罪行為に走るケースが後を絶たない。なぜこのような悲劇が起きるのか。防止策はないのか。
昔からあった有名人狙いのストーカー事件
事件が起きるたび、近年よく指摘されるのは、ファンや客との距離が近すぎる点。以前はステージと客席の間には目に見えない壁があったものだが、最近はその距離感を破壊し間近に接することのできる、いわゆる”接触イベント”が芸能界に定着した。 「会いに行けるアイドル」を標榜したAKB48自体が2014年、岩手県で開いた握手会でメンバーがノコギリを持った男に襲われ負傷するという惨事に見舞われた。犯人はAKBのファンではなく八つ当たり的な犯行だったが、懲役6年の判決が下った。 有名人を標的にしたストーカー事件は被害者の性別を問わず、また洋の東西を問わず、昔からある。美空ひばりが公演中、ファンの少女に塩酸をかけられた事件(1957年)などは有名だ。また、男性アイドルが就寝中に目を覚ますと、見知らぬ女性が顔をのぞき込んで笑っていた、といったホラー映画も真っ青の信じがたい事件の数々は、以前から芸能界の悩みの種だ。 ストーカーなる言葉が一般化する前は「熱狂的なファンが」といった表現がされていただけで、有名人との距離感を見誤ったことによるつきまといや襲撃など本質は変わらない。ただ最近はマイナーなアイドルの人数が増え、イベントの数自体も増加し、予算の関係から警備の手薄なケースが目立つのだ。