引き上げなるか、「103万円の壁」、具体案と財源を明示し選択肢を【播摩卓士の経済コラム】
衆議院選挙で自公過半数割れを受けて、議席を4倍に増やした国民民主党の存在感が増しています。国民民主党は、連立政権には入らないものの、政策実現に向け、自公と協力する方向です。国民民主党の公約のうち、ガソリン税の「トリガー条項撤廃」と、「年収103万円の壁」引き上げの2つが、当面の大きな焦点になりそうです。 【写真を見る】引き上げなるか、「103万円の壁」、具体案と財源を明示し選択肢を【播摩卓士の経済コラム】 ■「103万円の壁」とは、「課税最低限」 「103万円の壁」とは数ある「年収の壁」の中で、所得税が課税されることになる境界線のことです。所得税には、基礎控除が48万円、給与所得控除が最低55万円認められているので、パートやアルバイトを含め給与収入が合計の103万円を超えると所得税がかかることになります。 所得税は103万円を超えた部分に5%の最低税率をかけて算出するので、それを超えると手取りが減るというわけではありません。社会保険料の支払い義務が発生する、「106万円」や「130万円の壁」とは違って、より多く働いたのに手取りが減るという「壁」ではありません。 ただ、大学生の子どもなど扶養家族のアルバイト収入が103万円を超えると、親は扶養控除(一般で38万円、特定で63万円)が受けられなくなり、親の税額が増えてしまうので、こうした世帯にとっては、一種の「壁」と言えるでしょう。 なお、配偶者控除については、すでに年収150万円までは、配偶者特別控除が満額受けられるようになっているので、103万円はすでに「壁」ではありません。 ■国民民主党「178万円への引き上げ」を公約 先の衆議院選挙で国民民主党は、この103万円の壁を178万円に75万円引き上げると公約しました。実現すれば、課税最低限が上がるので、給与収入178万円までの人は、所得税を払わなくてよくなります。 さらに178万円を超える収入がある人も、所得控除額が178万円に拡大するので、その分が減税になります。つまり、「103万円の壁」の引き上げとは、ほぼすべての人に関わる所得税減税のことなのです。玉木代表の試算によれば、年収200万円の人は所得税と住民税を合わせて年8.6万円、年収600万円の人は15.2万円の減税になるそうです。