引き上げなるか、「103万円の壁」、具体案と財源を明示し選択肢を【播摩卓士の経済コラム】
玉木代表は、75万円引き上げの根拠として、課税最低限が103万円になった1995年と比べ、東京都の最低賃金が1.73倍になっていることをあげています。 ■財政当局は歳入の穴が7.6兆円と懸念 これに対して財政当局は、基礎控除の拡大は所得税のあり方の根本にかかわる上に、歳入の穴があまりに大きい恒久減税だ、と強く懸念を示しています。基礎控除を75万円引き上げた場合、国と地方を合わせ1年で7.6兆円もの減収になるとの試算を、早速まとめたほどです。また、所得控除の拡大は、所得の高い人ほど減税額、すなわち恩恵が大きくなるという問題点も指摘されています。 しかし、上記の試算は、75万円全額を引き上げ、しかも基礎控除だけで対応したケースです。幅の縮小をはじめ、制度設計によっては、やりようがあるのではないでしょうか。 ■引き上げ幅縮小や給与所得控除拡大など具体的な制度設計を まず、引き上げ幅です。玉木代表は95年からの最低賃金増加率73%を算出根拠にしていますが、物価上昇率は10数%でしょうから、どの程度引き上げるかで減税規模は大きく異なります。 また全額を基礎控除で対応するのではなく、給与所得控除の拡大をうまく併用する考え方もあるでしょう。103万円にかかる方は、ほとんどがパート、アルバイトの給与所得者です。現在の給与所得控除は、55万円からスタートして、給与収入によって段階を経て、年収850万以上では195万円と、上限が設けられています。ですから、中低所得者を中心に恩恵が及ぶような制度設計は十分可能です。 また、現在48万円の基礎控除にも、すでに所得上限があり、所得が2400万円を超えると段階的に縮小され、2500万円超ではゼロになります。基礎控除をいくらか引き上げるのであれば、この仕組みをアレンジして、高所得者の恩恵を小さくする一定の対処ができるかもしれません。 ■インフレ時代の所得税のあり方の議論を そもそも、課税最低限を長年、見直さず、放置して来たことが異常だったとは言えないでしょうか。課税最低限や税率の刻みの境界線といったものは、通常は、インフレが進めば、修正(引き上げ)されていくべきものです。名目所得が増加すれば、税率の累進税率によって、生活が苦しくなるからです。日本でこうした修正が行われなかったのは、デフレの時代が長かったからです。