木星の衛星「エウロパ」を調べる探査機、観測機器を展開–2030年に到着予定
米航空宇宙局(NASA)の木星衛星探査機「Europa Clipper」(エウロパ・クリッパー)が最初の科学機器を展開したことが11月25日に発表された。 Europa Clipperは氷に覆われた木星の衛星「エウロパ」の内部をレーダーで調査し、生命の存在が可能である条件が整っているかどうかを調べる。10月にSpace Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)の「Falcon Heavy」(ファルンコンヘビー)ロケットで打ち上げられたEuropa Clipperは、2030年に木星に到着する予定。 現在の速度は秒速約35km(時速約12万6000km)。2025年3月に火星の軌道に到達して、火星の重力を利用して速度を上げる予定。 Europa Clipperは打ち上げ直後に、巨大な太陽電池パネルを展開。最近では、磁力計のブームと宇宙船のレーダー機器用のアンテナを展開した。NASAによれば、「Europa ClipperはNASAが惑星探査ミッションのために開発した、最大の宇宙船だ」としている。 木星に到着したEuropa Clipperは2031年に49回のフライバイでエウロパを調査する。「氷の衛星とその内部の海が生命を育むのに必要な条件を整えているかどうかを収集する」とNASAは述べている。 エウロパの内部には、地球の海の2倍と考えられる水を含む海が存在し、地表には有機化合物やエネルギー源が存在する可能性が指摘されている。エウロパが居住可能と判断されれば、太陽系や太陽系以外の恒星系に居住可能な環境が存在することになるとして期待されている。 木星は地球から平均で約7億7000万km離れているために太陽から届く光も弱い。十分な光を集めるために、太陽電池パネルを大きくする必要がある。 木星は地球の2万倍もの磁場に囲まれていると考えられている。地盤が回転すると、荷電粒子が加速され、強力な放射線が発生する。このため、搭載される観測機器を放射線から保護するために、Europa Clipperの保管庫は慎重に設計されたという。Europa Clipperの軌道も木星周辺の放射線の多い場所に滞在する時間を制限するように設計されたとしている。
塚本直樹