なぜプロ4年目にして初達成のロッテ種市が今季パ”完封一番乗り”となったのか?
追い込んだ後の4球目のサインに首を小さく縦に振った。それも2度。千葉ロッテマリーンズのバッテリー、種市篤暉とキャッチャー柿沼友哉の思いは一致していた。最後も自慢の直球で締める、と。 投じた136球目はこの夜で最速となる149km。見逃せばボールになる外角高目の直球に、埼玉西武ライオンズの7番、コーリー・スパンジェンバーグのバットがたまらず空を切った。 「いや、もう(最終回は)力みまくっていました。最後、三振を取れてよかったです」 敵地メットライフドームで25日に行われた10回戦。ロッテの5点リードで迎えた9回裏二死満塁の場面で、成長著しい21歳の右腕が雄叫びをあげた。山賊打線から奪った10個目の三振とともに、プロ4年目にして初の完封勝利を達成した。今シーズンのパ・リーグの”完封一番乗り”は、昨年の防御率タイトルホルダーのオリックスの山本由伸でも2度完封勝利をしているソフトバンクの千賀滉大でもなく種市だった。 ヒーローインタビューの第一声で思わず苦笑いしたように、通算30度目の先発で初めて経験する9回のマウンドで、完封を意識するあまりに気合いが空回りしかけた。先頭の2番・源田壮亮から空振り三振を奪うも、続く森友哉にこの試合で4本目の安打となる二塁打を浴びてしまう。 4番・山川穂高をスライダーでレフトフライに打ち取ると、最後は三振で、という思いがさらに強まったのか。外崎修汰、一軍へ初昇格して即先発に名前を連ねたエルネスト・メヒアに連続四球を与えたところで、落ち着け、とばかりに吉井理人投手コーチがマウンドへ向かった。 このとき、一塁側のブルペンでは誰も準備していなかった。全幅の信頼ともに完封を期待された種市は、続くスパンジェンバーグを直球とフォークボールで空振りさせて瞬く間に追い込む。そして、ボールをひとつはさんだ後に柿沼とのあうんの呼吸で選んだ直球を、投げ終えた反動で身体を反転させ、右足を蹴り上げるような体勢になる豪快なフォームから思い切り投げ込んだ。 「130球ちょっと投げたので疲れましたけど、完封できたので気持ちのいい疲れです。いつもは(序盤から)球数が多いんですけど、今日は初回から球数を減らしていけたのがよかったと思っています」