荻原博子「今の高齢者は投資教育を受けていない。<新NISA>が始まろうとも言いなりで手を出すのは危険」萩原博子×樋口恵子対談
樋口 だから私は、孤立老人が増えないよう、人口が減った日本においては、政府がきちんと地域社会の再編成を行わなくてはいけないと思っています。 荻原 そういえば私、「ピンピンコロリの村づくり」を目指している地域を訪れたことがあって。 樋口 どのあたり? 荻原 島根県の津和野町です。松江からバスで山間に入って。そこでは集落営農という方法で、みんなで少しずつ出資し、話し合いながら、生涯現役で働ける村づくりをしている。加えて、若い研修生を定住させて、後継者がいなくても農業を続けられる仕組みも実践しています。 樋口 過疎を防ぐシステムをつくったんですね。 荻原 とにかく70代も80代も、みんな元気。畑仕事をしながら、あぜ道を狭んで楽しそうに協議したり、イキイキしているんです。若い人は「歳をとったら無理をせずに」などと言いがち。でも、やるべきことがあると、何歳になっても元気でいられるものなのですね。 樋口 私はかねて、「70代は老いの働き盛り」と言ってきました。必ずしも仕事でなくてもかまいません。ボランティアなども含めて、70代は積極的に外に出たほうがいい。 荻原 働く意味というのは、お金目的以外にもありますね。ずっと専業主婦でこられた方は60過ぎて外で働くのは怖いかもしれないけれど、思い切って外に出たら新しい人間関係も生まれるし、どんどん世界が広がる。やり甲斐もある。そういったことが、高齢になってからもご機嫌でいるための財産になると思います。 樋口 まさに「人(ひと)財産」築けます。私も91歳にもなって笑顔でいられるのは、まわりの人のおかげと思っていますし、今まで出会った方に感謝の思いでいっぱいです。 荻原 せっかくの人生、楽しく過ごしたいですね。たとえお金があっても気分が暗い人もいるから、自分の気持ち次第ですよ。 樋口 老後はお金や健康などの不安のある年代。正直なところ、腰は痛むし、気も短くなって、イヤになる日も(笑)。でも、嘆いてもどうにもなりません。だったら、老いてもご機嫌な時間を延ばしたいと思います。 (構成=篠藤ゆり、撮影=宮崎貢司)
萩原博子,樋口恵子
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