「欲しがるものは全て与え、焦らず待つ」HSCと診断された不登校の娘が学校に行くまでを支えた親の信念
学校に行けるようになったリコちゃんの変化
リコちゃんは学校に行くようになり無事2年生に進級した。ところが、新たなクラス担任に発達障害への理解が不足していた。「リコちゃんはお友達が声を掛けても無視しています。お友達がかわいそうだし、このままだといずれいじめの対象になるかもしれません」と言われた。 マキさんは「娘は本を読んで空想するのが好きで、自分の世界に入ってしまうと過集中してしまいます。そのため誰の声も聞こえなくなる時がありますが、無視しているのではありません」と説明した。なかなか理解を得られず、発達支援センターに相談して介入してもらった。 現在4年生。3年生から持ち上がった担任は「池添先生のファン」を公言する教員だったため、理解が深く助けられた。 実はマキさんは一度辞めた看護師の仕事をリコちゃんが小学1年生の夏から再開している。夏休みは仕事を理由に児童館に通わせ、生活のリズムが崩れないようにした。リコちゃんが休みたい時にはいつでも休めるよう、融通の利く職場を選んだ。時には夫も在宅勤務で面倒を見てくれた。 「病院勤務だと、その日その日に受け持ちがあって、1人抜けるとまたシフトを組み直すことになります。リコのことで学校に行ったりすると、迷惑をかけかけてしまうので。仕事は好きでしたが、辞めたことに悔いはありません。2か月間の不登校だったけれど、親としてすごく大きな学びをもらったと思っています」 リコちゃんは不登校を経た後、運動会や学習発表会にも参加できるようになった。保育園時代、すべての行事に参加できなかったことがうそのように生き生きした姿を見せてくれる。マキさんがなぜ参加するようになったのか尋ねると「小学生になったから」と答えたそうだ。 「本人の中で準備が整えば、行事に参加できるし、いろんなことができるようになるんですね。親は焦らず待つことが大事なんだなと実感しました」と母は顔をほころばせる。 子どもは、大人に大切なことを教えてくれる。クラスメートよりひと月遅れの種まきだったが、朝顔の花は咲いた。 人より種まきが遅くても、花を咲かせることはできるのだ。
島沢 優子(ジャーナリスト)